ウマ娘SS チート転生料理人主による善行2
コック・カワサキ。
この名前を知らない者は日本のレース関係者にはいないが、余り一般には知られていなかったりする。
それでも幾つかの商品の開発に寄与したと言うと「あぁ!」と言う人はいる。
本人は「ただの料理人」と言って謙遜するが、彼の功績は数知れない。
その最大とされるものが「余りにも美味い料理による故障したウマ娘の回復」である。
何だそりゃ?と思われるかもしれないが、これには理由がちゃんとある。
ウマ娘、彼女達は時折物理法則を超越する事がある。
これは才能あるウマ娘がその才能を最も発揮することで物理法則を超越するが故に発生していると言われている。
他にもウマソウルとかウマミトコンドリアとか言われているが定かではないが、ただ経験則として分かっている事が一つある。
こうした物理法則の超越はウマ娘の精神状態に最も左右されるという事だ。
極限の集中状態にあるレース時や調子が良かったりテンションが高い時によく起こる事からもこれは明らかだ。
故に、凄まじく美味しい料理を食べる事によってテンションが最高潮にまで高まった場合、そのウマ娘は物理法則を超える。
それが怪我や病気で故障しているウマ娘の場合、完全回復と言う形で現れる訳だ。
そして件のコック・カワサキが全力で作った料理はどのウマ娘も食べた事が無い程に美味い料理であり、ほぼ間違いなくこうした現象を引き起こしてくれるのだ。
幾度かの実験の後、この一連の事象を解析したコック・カワサキのスポンサーであるメジロ家はトレセン学園やそのOGの故障で泣かされた経験のあるウマ娘達に声をかけ、件のコック・カワサキの提供する料理を食べる事になった。
「美味あああああああい!!」
「バクバクバクバクバク…!」
「美味過ぎる!おかわり!」
嘗て怪我や病気による故障で涙を呑みながら引退していったOGや現在故障により引退を考えていた現役のウマ娘達が、「んなもん忘れたわ!」とばかりにバクバクとカワサキの料理を貪り食っていく。
内容は事前にアレルギーの有無や好き嫌いを聞いた上での極普通の定食なのだが、全てが凄まじい勢いで消えていく。
なお、費用は全てURA(という名のメジロやシンボリ等の名家)によって負担されているために彼女らにとってはほぼ極上のタダメシである。
とは言え、問題が無い訳ではない。
「すまない、お代わりを。」
「もうなんも無い…。」
「そうか…。」
骨膜炎によって苦しんでいたオグリキャップの様な、超大食いのウマ娘相手ではカワサキも分が悪かった。
「従業員雇うわ。」
「遅すぎる位ね。」
年老いて引退している父母も抜け、自分だけでは流石に無理だと判断した。
疲れ切ったカワサキは、常連であるメジロ・アサマ女史へと相談を持ち掛けた。
「後、何か一般に販売できる商品も開発すべきね。じゃないと碌に店を開けなくなるわよ?」
「あー、一応あるっちゃあるんだが…。」
「あら意外。」
「持ち込んだ会社に『美味過ぎて既存業者全部駆逐しかねない』って言われてな。余計な恨み買いたくないんで諦めた。」
「そんなもん値段と生産数でどうにかなるわよ。うちに任せなさい。」
なった。
そうして販売されたのが、コック・カワサキ監修の超美味い野菜ジュースと青汁である。
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