スパート
たっぷり走ったあとの睡眠はとても心地がいい。
いつもよりも深く…ゆっくりと眠れる。
この疲労感と温かい日差しが、それにより拍車をかける。
…ん?
暖かい…日差し…?
――――――――――
「え!?」
マーシャルはベッドから飛び起きた。
彼女に差し込む光は、時計を見ずともすでに正午であることを伝えている。
しかし、状況を整理できない彼女は時計に目をやる。
「12時…19分…。」
こんな大遅刻をしたのは生まれて初めてだ。
(そ、そうだ、たしか朝早くにトレーニングして、そのまま寝ちゃったんだ…。)
彼女は急いで学校の支度をしようとする。
(い…急がなきゃ、午後の授業なら…まだ)
そう焦る彼女は、一通の手紙が机の上に乗っていることに気が付いた。
「…ん?」
その封を開ける。
『おはよう、ポニーちゃん。
ゆっくり休めたかい?君のトレーナーさんからの伝言で、今日は学校を休んでゆっくりしろってさ。そしてまた16時に練習場で待ってるとも言ってたよ。頑張ってるのはいいけど、あまり無茶をしすぎないようにね。
フジキセキ』
「お…お休み?」
急に休みだといわれても、それはそれで調子が狂う。
「…ま、おなかもすいてるし。」
そういって彼女は制服へ着替えた。
――――――――
練習場で準備運動をする。
体の節々を入念に。ゆっくり寝れたおかげか早朝の疲れはある程度吹き飛んでいた。
「よーォ。」
いつもは遅れてくる大城が、今日は珍しく時間どおりに来た。
「お疲れ様です、トレーナーさん。今日は時間通りですね。」
「遅れるとお前がうるせえだろ?」
「えへへ、時間は大事ですから!」
「つーかお前、今日午後からの授業出たらしいじゃねーか。ったくクソ真面目だなぁホント。休めって言われたら休めよ。」
「ごめんなさい。でも、せめて勉強では、みんなに遅れたくないから…。」
大城は錠剤を飲みながら、続ける。
「ま、とにかく今日は、普通に走ってみろ。」
「普通…に?」
「そ、こいつで、ターフ一周。50%くらいで流してみろ。」
そういって大城は新品のランニングシューズを差し出す。
「こ…これ、」
「ターフエンペラー。一流ブランドもんだぞ?」
それは誰もが知る、ウマ娘専用のブランドもののシューズ。
国内外問わず、トップウマ娘が愛用していることで広く知られる。
「い、いいんですか…?」
「お前が勝つことに比べれば安い買い物だ。さ、さっさと履け。」
「あ…ありがとうございます!!」
早速履いてみる。
「うわぁ…すっごい…。」
洗礼されたデザインと、徹底された軽量化。ウマ娘工学に基づいて細部まで作りこまれたそれは、履くだけでもその違いを体感できた。
「これ…すっごく軽い。」
「というか、いままで履いてたやつが重すぎただけだ。」
「…そうですよね。」
その蹄鉄を脱いで初めてわかる、今までの異常な生活。
でも、今の足はまるで、翼が生えたように軽かった。
「ターフ一周50%、そして4コーナー抜けて直線で、一気に全力で走れ。」
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