リベンジ
「…くくっ…ったはあ!!」
大城は顔を掌で押さえて、肩を震わせて爆笑していた。
その傍らで、体操服を着たマーシャルは、どこか不満そうに、その爆笑する自身のトレーナーに冷ややかな目線を突き刺していた。
「…トレーナーさん。」
「…いや…悪い…でも…よ…お前が走るレース…個人協賛でよ…『まじかる☆らぶりん きらきらもーど!杯』ってよ…お前本当ツいてるよな…ああダメだ。」
そういってまた爆笑モードに入る。
「もぉ!レース名はなんだっていいじゃないですか!集中したいんですよ!私!」
「わりぃわりぃ…ま、今日こそは…テッペン取りにいこうぜ?」
マーシャルは険しい顔をする。
「にしても…内枠に…オオシンハリヤー…ねぇ。因縁の相手だ。今日も大逃げで来るだろうな。」
オオシンハリヤー…前回マーシャルがフルで7秒使い切っても、勝てなかった相手。
「…どうする?何かアドバイスは欲しいか?」
「…教えてくれるんですか?」
「ああ...ケツをキュッと閉めろ。以上だ。」
「…期待した私がバ鹿でした。」
「そう不貞腐れんな。..わざわざ教えてやる必要もないってことだ。ナマイキな大逃げ野郎の鼻っ柱、根本から折ってこい!」
――――――――――――
『さぁ、始まりました。まじかる☆らぶりん きらきらもーど!杯。各ウマ娘ゲートに入ります。』
大城は淡々と読み上げるアナウンスに、再び爆笑する。
目のいいマーシャルはそんなトレーナーの緊張感のない姿をみて、呆れながらゲートに入った。
そして、ガコン!と音を立てて、ウマ娘が一斉に飛び出す。
『さぁ、各ウマ娘、綺麗に並んで出走しました!』
横並び一直線から、隊列を成すかのように、ウマ娘たちが散っていく。
『さぁ先頭はオオシンハリヤー!!出だしから抜け出した!!今日も大逃げのスタイルを見せつける!!..少し離れて先頭集団。ジョジョセンホーロー、マックオンリー、レッドマーシャル‼』
『レッドマーシャル、今日はやや前位置で構えています。』
常に射程圏内へと構える必要はない。だけど、この手の相手だと、終盤のスパートで稼げない可能性も大きい。
ならば、今日は少し前に構える。
「…OK、それでいい。」
コーナーに差し掛かるまでの間、スリップストリームにて体力の温存に入る。
(…でも、さすが先頭組…ペース早いなぁ…。)
マーシャルは自分の前にいる、マックオンリーというウマ娘のリズムを吸収し始める。
(…集中…呼吸を…忘れない…!)
一つ一つパズルのピースを埋めていくように、ロジックを作り上げるように、チェスの定石を打つように。マーシャルは堅実にレースの組み立てを行う。…すべては…7秒の為に。
そしてコーナーを回る。
(…よし!見えてる!)
彼女の視界には、ハリヤーの背中が見えていた。
オオシンハリヤーさん。
…確かに…私は…総合的に見れば…あなたには敵わないかもしれない…
だってあなたは…マイルとか…中距離だって走れるんでしょう。
一着だっていっぱいとってるって聞いたよ。
…それに比べたら…私なんて…1200か1400を走るのが精いっぱい。
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