蜘蛛1 決死の攻防戦の乱入者
——いっけぇぇっっ!!!!
ありったけの力を込めて、張り巡らせた糸に操糸のスキルを流し込む。
私は、足を胴体を全力で握り潰そうとする猿を引き摺って、断崖絶壁の岩壁を駆けていた。
ただでさえ無茶をしているのに加え、僅かな隙でも飛び掛かってくる猿が折角レベルアップで治ったばかりの身体を傷つけ、HPを急速に削り取っていき激痛が走る。
けど、止まるわけにはいかない。
止まってしまえば、待っているのは蹂躙され惨めな死体に成り果てるだけだ。
そして出っ張った岩を利用して急激なUターンをし、その勢いと遠心力で私を掴んでいた猿たちを振り払って糸にて拘束し、そのまま地面に叩きつけるように引っ張りながら飛び降りる。
それと同時に私は、操作できる限界まで掌握した糸に、指示を与えた。
——壁との粘着を放棄しろ、と。
私の指示通り、糸は重力に引かれ落ちていく。
絡みついた無数の猿どもを巻き込んで。
轟音を立てて、一種の質量攻撃となった糸と猿の塊がその重量をもって岩壁をも削りつつ、地上にいた猿をも巻き込みながら崩れ落ち、土煙を上げて押し潰していく。
一つ崩れればその左右の壁も引き摺られて崩れていき、連鎖的に被害が拡大していく。
それを、すぐさま簡易ホームまで駆け登り戻った私が、鳴り続けるレベルアップのアナウンスを聞きながら見下ろしていた。
うっひゃぁー……、あれだけ倒せばそりゃぁレベルも上がるよね。
けれど、それで倒せたのは群れの一部でしかなく、まだまだ猿の大群は残っていて戦いは一時の小休止も挟まらず、終わっちゃいない。
増援が止むことなく今も増え続けているし、しかも中には不味い奴らもいる。
《バグラグラッチ LV3》《バグラグラッチ LV4》《バグラグラッチ LV6》
鰐のような長い口にギザギザの鋭い歯が何本も見える、猿の倍ありそうな巨猿。
あの猿の種族名、アノグラッチと似た名前。
——こいつら、猿の進化系だっ!
くそ、どうする?
今も猿は圧倒的な個体数の差で、身を挺して粘着糸を潰しながら登ってきているし、巨猿の方は何メートルもある岩を軽々持ち上げて振りかぶろうとしていた。
うわっ、危なっ!
トンはありそうな岩を姿勢が揺らぐことなく放り投げてきて、恐ろしいスピードと質量を持って簡易ホームに突き刺さる。
なんつうパワーしてんのよ。
しかも身を隠せる足場も無くなったし、どうすれば……
焦りを感じつつ頭をフル回転させていると、突然一条の光線が後方の猿に突き刺さった。
光に貫かれ胴体に風穴が空いた猿は、私が初めて猿を仕留めたときと同じように断末魔を上げて崩れ落ち倒れ伏す。
それを皮切りに、猿たちの半数が私を無視して光が飛んできた暗闇の向こうへ走っていく。
光無い迷宮で目が眩むような光は、一射ごとの間隔は早くないものの絶え間なく降り注ぎ、複数の猿をまとめて殺害していく。
すでに何十と撃たれ、そして何十も暗闇の向こうに猿が消えて行ったというのに、光線は止まることなく正確に猿を撃ち抜いていた。
猿が段々と減っていくのを見過ごせないのか、巨猿の一匹が私から謎の光の主へと、ターゲットを変えて向かっていき闇に紛れて見えなくなった。
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