ハーメルン
日下部鎮守府の物語 ~工学者だったけど艦娘に恋したので、提督になりました~
そういうもの 5
君が笑えば、世界は君とともに笑う。君が泣けば、君は一人きりで泣くのだ。
――エラ・ウィーラー・ウィルコックス
「提督、結構Abnormalな性癖持ちだったのデスネー……」
「おや、この程度でそう言われるとはなかなか心外な」
「私はやっぱり、提督の顔をきちんと見ながら、というのが一番デース」
「だよな。金剛の場合は尻より胸だよな普通に。うんわかった、次から任せろ」
「Wow……微妙にニュアンスが通じてない……私、結構大変な人を好きになってしまったみたいデース」
「でも嫌じゃないよな?」
「…………Yes」
「……という顛末があってだな」
「いや最後のピロートークは明らかに余計ですわよね? なんですのクソサイコ野郎、陽菜は高度なノロケをぶちまけられてますの?」
「さっきお前が『金剛は提督Love勢筆頭だ』ということを教えてくれたついでに、自分とこの金剛とのネッチョネッチョした、百合というよりレズレズしい顛末を語ってくれた御礼だクソレズ」
おかしいな。長谷川は私の後見人として、監督訪問しに来てたはずなのだが。
何故こんな話になっているのだろう。
応接室のソファー越しに、しばし無言で睨み合った後、長谷川は小さく溜息をついた。
「あらまぁ、可愛くない。すっかり昔のクズっぷりを取り戻しやがりまして」
「む。さすがにそれは心外だぞ」
「そんなことよりですね。なんですか、『ジュウコンできることを知らなかった』って!
着任直後の金剛はともかく、あなたは当然知っていて然るべき情報ですよね!
研修も受けましたよね! 綱領にも載ってますよね!」
「あ、いや。鎮守府立ち上げでバタバタしてて、頭から抜けてた……」
慌てて言い訳するも、当然ながら長谷川の追撃は止むことなく。
「じゃあ今からでもいいので、綱領なり他の資料なり、いちから読み直しなさい!
あなたの鎮守府も沖ノ島海域を攻略したのなら、いつまでも新米新米で甘えてられないのですよ!
あなたのところの艦娘には、あなたしか提督がいないのですから! あなたがしっかりなさい!」
「ごもっとも!」
うん、時間を見付けて、ちゃんと提督の勉強をしなおそう。
――と、その時だった。
「司令官、その構図いただきました!」
応接室の外、窓の傍に生えた樹の陰に隠れて、一人の艦娘がこちらを覗き込んでいた。
薄桃色の髪と青い瞳。セーラー服の胸元に、黄色のスカーフが揺れる。
手にしたカメラが一瞬光り、私と長谷川の姿を写真に焼き付ける。
「おい青葉ぁーッ! 提督同士の会談を無断撮影とか、アウトに決まってるだろーっ!」
「……まったくですわね。艦娘の管理不行き届きとして、評定に付けておきますわ」
「ぐわぁっ!」
思わず悲鳴を上げた私の内心を知らずか、飄々とした態度で青葉は言い放つ。
「だって青葉、気になるんですよ! お二人って時々、びっくりするくらい距離が近いですし!
長谷川提督もレズとか言ってますけど、本当は男性も行けて、こっそり人間同士で付き合ってたりするんじゃないですかぁー?」
その言葉に私と長谷川は、思わず顔を見合わせた。
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