ハーメルン
勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~
18羽
スバルたちが黒服の男に連れてこられたところは島の中でも一番背の高いビル、そこの最上階にある広い部屋でした。
正面の壁はガラス張りになっており、島全域だけでなく広大な海、海の向こうで霞んでいるホロ・デ・ソーセージ大陸まで一望できます。
そのガラス張りの壁際に黒革製の重々しい椅子が置かれており、椅子には誰かが座っています。
スバルたちに背を向けているその人物は、椅子に座りながら静かに下界を見下ろしているようでした。
時々椅子からはみ出た巨大なトカゲの尻尾のようなものが、右へ左へと動いています。
「あのー、会長?」
黒服がその人物の背中に呼びかけます。
ちなみに彼はノックしてから入室していました。
それなのに会長と呼ばれているその人物は、スバルたちと彼女らを連行してきた黒服がやって来たことに気が付きません。
「会長、会長!」
黒服の男は声を大にして再度呼びかけました。
「ん? おお」
するとようやく、その人物が返事します。
それは女性の声でした。
「会長、例のやつらです。連れてきました」
「おー、悪いなア」
彼女が答えると黒服は「ではこれで」と言い置いて、スバルたちを部屋に残しドアを閉めて退室してしまいます。
男がいなくなってから少しして、黒服に会長と呼ばれていた女性はくるんと椅子を回しスバルたちの方へ向き直りました。
それから彼女は立ち上がり、カツカツカツと床を踏み鳴らして近寄ってきます。
長身の女性です。
オレンジ色の髪を腰の下まで伸ばしており、先ほど見えたトカゲの尻尾のようなものが尾骨あたりから生えています。
その尻尾がオレンジ色の髪の毛先をそわそわと揺らしています。
容姿の異様な点は尻尾だけではありません。
耳はエルフのように先が尖っており、頭側部左右にも鋭い角を生やしています。
彼女は一房だけ黄色く染まった前髪を人差し指でピンと弾いてから、ゆっくり口を開きました。
「おー、おー、おー、おー。おまえらかア、ワタシの島でおイタしたってやつア」
「先に剣を向けてきたのはそっちデス」
言いがかりをつけるようなこと口にする彼女に、キアラが言い返します。
すると彼女は「そうか。そりゃア悪かったな」とあまり詫びているようには見えないものの、謝罪をしてくれます。
「だがなア、ワタシらからすれば家の庭に不法侵入されたようなモンよ。そりゃア警戒するだろう」
言いながら顎をしゃくってスバルたちにソファを勧めました。
スバルたちが座ると彼女も向かいに腰を下ろします。
「だがまあ、時期も時期だからなア、うちのもんたちもピリピリしてるし、ワタシが把握してる以上に失礼なことをしちまってるかもしれん。すまんかった」
そう言いながら、彼女はふたたびスバルたちに謝ります。
それは先ほどのようなおざなりなものでなく、テーブルに両手をついて頭を下げる真摯な謝罪でした。
「い、いえいえ、あなたの言っていることもわかりますし、どうか止してください」
思わずるしあは立ち上がり、女性に頭を上げてもらいます。
「時期も時期とおっしゃりマシタが、なにかよくないことが起きているのデスか?」
[9]前話
[1]次
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:1/5
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク