ハーメルン
勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~
4羽
「実はるしあのひいひいおばあ様の手記に、愛する人をこの魔法でアヒルに変えたあとに後悔して、元の人間に戻したという記述があるんです」
「シュバ」
(へえ)
根負けしたるしあによって牢獄から出されたスバルは、大きな書斎部屋に通されました。
そこは書斎というよりも最早本の保管室で、入り口近くに椅子と机がある以外は足場もないほど本で埋め尽くされています。
るしあは椅子に腰かけながら豪華な装丁がなされた手記を広げていて、スバルは机の上に乗りながらその開いたページを覗き込んでいます。
「それによると、ひいひいおばあ様は伝説級剣士、つまりレジェンドソーセージ所有者の剣士をすべて倒すことでこの呪いを解除したようです」
「シュバルバシュバルバシュバババシュバルバ、シュバルバシュバシュバシュバルバシュバルババ」
(すべてのレジェンド所有者を倒すって、おまえのひいひいばあちゃんバケモノだな)
レジェンドソーセージ所有者とは、その言葉の通りレジェンドソーセージのフォークを持っている剣士のことです。一般に「レジェンド所有者」と通称されています。
ちなみにレジェンドソーセージは世界に十二振りしか存在しないため、そのフォークの持ち主は世界に十二人しかいません。
そのため彼ら彼女らは剣士たちにとってアイドル的な存在とみなされることが多く、レジェンド所有者はしばしば伝説級剣士とも呼ばれるのでした。
「そうですね、にわかには信じがたいです。剣士としての適性が極めて低いるしあの一族が剣士を、しかも伝説級剣士を倒しただなんて。でも今それを勘ぐっても仕方ないですし、ここはスルーして先に進みましょう」
言いながらパラパラとるしあはページをめくっていきます。
「シュバルバシュバババ。シュバルバシュバババシュバルババシュバルルシュババシュバルルバ」
(レジェンド所有者か。どうして所有者を倒すことが呪いを解くことになるんだろうな)
「どうやら不思議な力を秘めた魔導書の発動条件のようです。その魔導書にアヒルの呪いを解く力が宿っているらしいのですが、ちょっと待ってください、えっと……」
ぶつぶつ言いながらるしあは部屋中に散乱している本を手に取ったり放ったりしながら、なにやら探しはじめます。
それからしばらくして、
「あった! ありましたよスバル先輩!」
彼女は子供のようにはしゃぎながら、一冊の本を抱えて戻ってきました。
「スバル先輩、これです。不思議な力を秘めた魔導書」
「シュバ」
(ほう)
スバルはちらりとその本の表題を見ます。
ですがその直後に「ぶっ」と吹き出してしまいました。
「シュバシュババ。『シュバシュババシュバ』シュバルルシュバシュババ」
(おいマジか。『クソザコの書』とか書いてあるんだが)
「はい間違いありません。本の名前も手記にある通りです」
「シュババア」
(マジかあ)
スバルはボソッと呟いてからもう一度本の表題を見て、また「シュババア」(マジかあ)と呟きます。
「スバル先輩、話の流れを戻しましょう」
るしあは仕切りなおすように「こほ、こほん!」と咳払いをしました。
「この世界にはレジェンドソーセージと呼ばれる十二振りしかない特別なソーセージが存在します。スバル先輩、すべてのレジェンドソーセージをご存じですか?」
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