ハーメルン
勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~
5羽
るしあはスバルを膝元に乗せながら馬を走らせます。
行き先はるしあとスバルがはじめて会った場所であり、スバルがアヒルにされた場所でもあるアヒール村です。
「お邪魔します」
スバルとるしあはかつてスバ友が行きつけにしていた例の酒場に入りました。
「おうおう、なんだなんだ?」
「こんな昼間っからこんなところに来てちゃあいけねえよ、お嬢ちゃん」
そこはまだ昼頃だというのにジョッキビールをあおる男たちで溢れ返っていました。
るしあは無視してカウンター席に腰を下ろします。
スバルは彼女の隣の椅子に座りました。
「マスター、注文いいですか?」
「ああ」
さっそくレジェンド所有者についての聞き取りをしたいところですが、情報を得るためには対価が必要です。
何か注文しなくてはと、るしあは張り出されているメニューを見上げます。
「スバル先輩、何を飲みますか?」
「シュバルシュババ」
(メロンソーダで)
スバルは一切メニューを見ることなく答えました。
「マスター。こっちにメロンソーダを、るしあにはミルクをお願いします」
るしあの注文に、店主は洗い終わったジョッキを布巾で拭きながら「ああ」と生返事します。
しかし一向に飲み物を出す気配がありません。
「聞こえていますか? こっちにメロンソーダとミルクを持ってきてください」
もう一度呼びかけると、マスターは「ちっ」と面倒くさそうに舌打ちしてから初めてるしあのほうに目を向けました。
「ミルクは2ソセレだ。それと、うちはアニマルフードショップじゃねえんだ。アヒルに出す飲み物は置いてねえぜ」
「シュバアアア!」
(おめえええ!)
るしあは「スバル先輩、どうか、どうかお怒りを抑えてください」とスバルをなだめてから、キッとマスターをにらみつけます。
「マスター! るしあたちは客ですよ! いいから言われたものを持ってくるんです!」
ダン! とるしあが台パンして怒鳴ると、店主は「へいへい」と頭を掻きながらしぶしぶ奥に引っ込んでいきます。
それからしばらくしてカウンターに戻ってきました。
「はいよ、こっちがミルク。ジョッキ入りで2ソセレ」
彼はるしあの手前にミルクが並々注がれたジョッキを置きました。
「それと、これがお連れさんのメロンソーダだ」
スバルの手前にも飲み物を置きます。
しかしそれは犬のエサ皿に入れられたメロンソーダでした。
「本来なら3ソセレのところだが、特別料金で5ソセレだ」
「シュ、シュバ、シュバ、シュバアアア……ッ!」
(お、おめ、おめ、おめえええ……ッ!)
スバルがプルプル震えながら叫びます。
るしあはそんなスバルの背中をさすってやりながら「わかりました」と答えました。
「じゃあ10ソセレ払うので、差額分だけ聞かれたことに答えてください」
「ああいいぜ、一体何を知りたいんだ?」
るしあはジョッキに入ったミルクをくぴくぴと飲んで卓上に置き、口元を拭ってから「レジェンド所有者に関する情報です」と切り出しました。
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