ハーメルン
勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~
6羽

 スバルとるしあがアヒール村にやってきてから一週間が経ち、半月が経ち、一ヶ月が経ちました。
 しかしアヒールの騒ぎはなかなか収まらず、彼女たちは村へ入れずにいました。

「どうしましょうかスバル先輩」

 るしあがスバルに尋ねます。

「さすがにこれ以上長引きそうだと、いったんるしあの屋敷に引き返して旅の準備を整え直したほうがいいと思うのですが」

「シュバルバア」
(そうだなあ)

 実はスバルもるしあと同じことを考えていました。
 食料についてだけ言っても、肉や野菜は毎回ジョゼフとたまき君が頑張って取ってきてくれますが、臭み消しなどに用いる調味料の残量は心許なくなってきていました。
 その他、こまごまとしたものも不足しがちになっていたのです。

 普通の旅であれば近隣の村や町に買い出しへ行って補充すれば済むところですが、そもそも近隣の村であるアヒールに入れず手こずっているわけで、そのアヒール村を除けば最も近い補給場所がるしあの屋敷なのです。
 そこでるしあはいったん屋敷に戻らないかと提案しているのでした。

「シュバ」
(よし)

 それもやむを得まい、とスバルが思った時でした。

「くっくっくっ」

 すぐそばの茂みから、男の声がしました。

「見つけたぜ、アヒルと魔女のお嬢ちゃん」

 スバルとるしあが声のほうを振り向くと、中年の男が背高い茂みを掻き分けて出てくるところでした。

「こんなところに隠れてるなんてな、手間とらせてくれるじゃねえか」

「くっ!」

 スバルとるしあは後ろへ飛び退き男から距離を取ります。

「わかってるだろうな、おまえら」

 男は笑いながら二人に話しかけます。

「おまえらは俺たちスバ友の触れちゃいけねえ逆鱗ってとこに触れちまったんだ。これは覚悟してもらわなくちゃいけねえわけよ」

 言いながら男はスバルたちに近づいてきます。

「たまき君!」

 るしあは声を張り上げました。
 すると直後ズルズルズルと、スバルたちと男の間を割り込むようにして土の中からたまき君が現れます。

「戦いなさい、たまき君!」

 るしあが指示すると、たまき君は右足に付けたレッグバッグの中から金色のフォークを取り出しました。

「金色のフォーク、上級剣か」

 それを見た男がぼそりと呟きます。

 ソーセージのフォークはその色によってランクを識別することができます。
 金色のフォークであれば上級剣士の用いる上級剣、銀色のフォークであれば中級剣士の用いる中級剣、木製のフォークであれば下級剣士の用いる下級剣、といった具合です。
 ちなみにスバルが持っているようなレジェンドソーセージのフォークは虹色をしています。

 たまき君は金色フォークをぶん! と振るいます。
 するとフォークの先に上級剣ソーセージのレバーケーゼが現れました。

「……。くっくっくっ、くははははは!」

 男は急に笑いはじめました。

「な、なにがおかしいのですか! レバーケーゼは上級剣ですよ!」

「別におかしくはねえさ。ただ覚えておきなお嬢さん方」

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