ハーメルン
勇者スバルの大冒険 ~剣(ソーセージ)に愛されしアヒルよ、伝説となれ~
9羽


「ありがとー!」

 それを見た女性はけらけら笑いながら礼を述べました。

「……どういたしまして」

 ぶすっとしながらるしあが返します。

「やだなもー、そんな不機嫌そうな顔しないでよー。船長この町にすっごく詳しいからさ、奢ってもらったお礼になんでも教えてあげちゃう」

 そう言ってから、彼女は右手に持つジョッキの中身をぐいぐいあおりました。
 そんな彼女の卓上は空のジョッキで置き散らかされています。
 相当お酒が入っているようでした。

「ぷはあ! うめえええ!」

 彼女は緋色の髪をツインテールに結っており、右目には眼帯を当てています。
 頭には海賊のキャプテンが身に付けていそうな物々しい被り物をしています。

「あんたたち、名前は?」

 ジョッキから口を放し、彼女はるしあたちに聞いてきました。

「潤羽るしあといいます。こっちは小鳥遊キアラ、そしてスバル先輩です」

「よろしくデス」

「シュバルシュバ」
(よろしく)

 三人はそれぞれ軽く頭を下げます。

「ふふん、いいなあ青春してて」

 女性はるしあたちを順々に見回して、最後にスバルで止まります。

「とくにアヒルちゃんはいい名前つけてもらって愛されてるじゃないですかあ、かぶってる帽子が前後逆ですよっと」

「シュバシュババ! シュバルシュシュババシュバ!」
(おいやめろ! これでいいんだシュバ!)

 前後の向きを変えられたスバルのキャップ帽をるしあが元に戻してあげます。
 それを見た女性は「あらー、ごめんごめん!」とまた笑いながら謝って、ビールを一口飲んでからるしあ達に向き直りました。

「船長の名前は宝鐘マリン、船長でもマリンでも好きなように呼んでよ。まあ別にどっかの船の船長ってわけじゃないんだけどねえ」

 キャハハハ! と一人で受けて笑って、またビールを流し込みます。

「では船長、さっそく聞きたいのですが」

 聞きたいことだけ聞いて早くここから立ち去ろう、そう言いたげな顔でるしあはマリンに話を切り出します。
 するとマリンは身体を乗り出すようにして「お、なになに?」と促しました。

「実は、るしあたちは訳あって西の孤島へ行きたいのですが、船場の人たちに頼んでもみんな嫌がって船を出してくれません。どうしてなのか知りませんか?」

「……」

 るしあの問いかけに、マリンはニコリと微笑み返してからまたビールを傾けます。
 もうジョッキの中身は空なのに、残った泡を食べようとしているようでした。

「船長、どうしてですか?」

 じれったくなったるしあが聞きなおします。

「うるせえな」

 ぼそっとマリンは言いました。

「え?」

「西の孤島? はん! そんなの船長の知ったこっちゃないし!」

 マリンはそう吐き捨てるなり、いきなりガン! とジョッキをカウンターテーブルに叩きつけるように置いて「マスター!」と声を張り上げました。

「ビールはまだ! いつまで待たせるの!」

 店主は「はいはい」と答えながらマリンの卓上に新しいビールジョッキを置きます。

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