喪失
「の、呪いってどういうことだよっ!?」
霊夢の言葉に上条は驚きを隠せない。禁書目録も酷く困惑している様子だった。
「この子の身体には呪い──つまり魔術が施されている。それが魔力を食い潰しているから、端から見れば魔力が練れないように見えていたのでしょうね」
淡々と説明する。巧妙に隠されており、たとえ魔術師であっても見抜くのは難しい。霊夢が気付けたのもほんの僅かな違和感を察知したからだ。
「け、けど俺はインデックスに何度も触れてるぞ? ならその呪いなんてとっくに──」
「解けてない。ということは、やっぱり体内ね。術式そのものに直接触れないとあんたの右手は発動しないのは確認済みだし」
「……私には、どんな魔術が掛けられているの?」
不安そうに禁書目録が問う。初めこそ半信半疑であったが、言われてから意識すると、確かに身体に違和感があった。
「さあ? 流石にそこまでは分からないわ。何となくろくでもないような気がしたから呪いと揶揄したけれど、もしかすると悪影響を及ぼさない、むしろあなたを守る為のモノである可能性もなきにしもあらず……何か心当たりないの?」
「……ううん。分かんないんだよ。私は一年ぐらい前から記憶を失っている、から……」
「──何ですって?」
体内に直接術式を施す。そんな所業を本人に気付かれずに行うというのはいくら魔術師といえど考えにくい。
故に、霊夢は禁書目録が何か知っているかもしれないと問いかけるが、絞り出すように彼女が話した内容に眉をひそめる。
記憶を失っている、彼女は確かにそう言った。
これについて上条が補足する。禁書目録は気付いたら記憶を失った状態で日本に居て昨日の晩飯も分からないままただひたすらに逃げていたのだと。
霊夢は妙だと思った。ならば何故10万3000冊の魔道書のことは覚えているのか。意味記憶は無事で、エピソード記憶のみが欠落している? だとしたら、それはまるで──。
「………………」
「れいむ?」
「……記憶を失う、それ自体もこれが影響しているかもしれないわね」
「──えっ」
「なっ!? どういうことだよっ!?」
表情を変え、ぽつりと漏らした霊夢の見解に禁書目録は顔を青くさせ、上条も目を見開く。
「考えてもみなさい。10万冊以上もの魔道書の知識を自由に扱えるような奴なんて、管理する立場からすれば危険極まりない爆弾のようなもの。私がその立場なら何らかの制限を設けて自由に動けなくさせるわ」
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