チューリップ賞
先日のスノープロウ式除雪の報酬として連れて行った焼肉は、宮下とダイワスカーレットも同伴、フェロー225で遊んでいたところを見逃してもらうため、たづなさんもお招きした結果、俺の財布はすさまじい軽量化を達成した。その反面ウオッカとダイワスカーレットのバ体重が増えたため、最近は絞るためにウエイトなどの筋トレメインのメニューをこなしてもらっていた。
スカーレットは嘆いていたが、別にそんな変わっちゃいないだろとウエストをつっついたところ蹴っ飛ばされた。文字通り蹴っ飛ばされた。それはもうリッターSSでハイサイドした時並みに吹っ飛んだ気がする。
ようやく降り積もった雪が溶け切ったがまだまだ寒さの落ち着かない日々、コタツに足を突っ込みながらウオッカと向き合い今後の詳しいレースプランを練っていた。
トレーニングの効果と様子見のために出走したエルフィンステークスを難なく勝利。上がり3ハロンは34.0とこれまでよりも確実に速くなっている。得意距離を考えれば次走はGⅢチューリップ賞がちょうどいいか。
時期的にも1か月スパンとなるし、トライアルレースでもあるチューリップ賞は3着までに入着を果たせばティアラ路線の一冠となるGⅠ桜花賞への優先出走権が与えられるのだ。これを狙ってGⅢではあるがレベルの高いウマ娘が出てくる。
そして今後ライバルとなってくるであろうダイワスカーレットだが、彼女が目指しているのはトリプルティアラ、つまり桜花賞への優先出場権を狙ってチューリップ賞へ来るのは確実だろう。昨年12月のOP戦は1着、今年に入ってからのシンザン記念は2着と惜敗しているが実力は申し分ない。
「さて今後なんだがチューリップ賞→桜花賞かNHKマイルカップ→日本ダービーって路線を考えてる」
今後のレース日程も考慮して順にペンで指しながら順を追って説明していく。
基本的にはウオッカもダイワスカーレットと同じくティアラ路線でやっていくことになる。しかし彼女と俺が目標とするのは日本ダービー。いままでマイルレースに重点を置いてきたが、日本ダービーは芝2400mの中距離最長レース。正直なところ2000m級のレースは一回体験させておきたい。
最近は宝塚記念やエリザベス女王杯と同じ2200mまで距離を延ばして併せウマをしているが、一発模擬レースでもやっておくべきか悩ましい所である。
「チューリップ賞は分かったけどNHKマイルカップはなんで選択肢に入ってんだ?」
「変則二冠を狙えるからだな。チューリップ賞を勝てど負けれど日本ダービー狙いなんだからトリプルティアラは取れない。なら桜花賞を蹴って狙いに行くってのもアリじゃないかと思ってんだ。まあNHKマイルからダービーはちょっと日程が近いからあまりお勧めはしないがな」
資料を眺めながら思案する彼女。しかしやりたいことはすでに決まっているようで程なくして目線を合わせてきた。
「チューリップ賞から桜花賞、日本ダービーを狙う。初めから言ってた通りのプランで行きたい」
「一応、桜花賞に行く理由を聞いてもいいか?」
「アイツに、スカーレットに勝ちてぇ」
何の迷いもなく言い放った。こちらを見据える強い光の灯る瞳。
「……なるほどね」
くくくっと、思わず笑みが零れてしまった。
いいじゃないの。勝ちたい奴がいる、超えたい奴がいる、ライバル関係大いに結構。そういう熱いやり合いは大好きだ。
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