ハーメルン
タンデムで見た海
京都メイクデビュー

早朝まだ街が本格的に起き始める前、駅に向かう一人と一人。盛大に欠伸しながら歩く猫背と髪を揺らしながら歩く鹿毛。

「なんだよ…盛大に欠伸なんかして寝れなかったのか?」
「そうなんだョ…電車移動って好きじゃなくてサ。京都なんて陸続きなんだからバイクで行っちゃダメかたづなさんに聞いたら秒で却下された…」

暗い顔してた原因それかよ。てっきり寝不足で体調良くないのかと心配しちゃったじゃん。オレの心配返せよ。

「バイクで京都行くなんて何時間かかるんだよ…」
「あ?5時間ありゃ着くわ。名古屋なら3時間」
「新幹線の方が早くね?」
「新幹線並みに速度出してたらやべーだろうが」
「トレーナーならやりそうな気がするけど」
「周りが俺のスピードに付いてこれねーからあぶねーの。東名だって夜中はトラックだらけだし突っ込んだらこっちが逝くわ」

カッコよすぎんだろ…。なんだよ周りが俺のスピードに付いてこれないって。オペラオー先輩とのかっこよさ対決で言ってみてえわ。


府中から準特急に乗る。平日であっても早朝だからか、まだ椅子が埋まるくらいで立ち客はまばらだ。これがあと1時間もすれば乗るのも憚られる満員電車の出来上がりなんだから、つくづくターフの上を走れる爽快感ってすっげえよな。

新宿でJRに乗り換え山手線で品川へ、品川から新幹線に乗り込んだ。ここから京都まで2時間ちょっとだ。荷物を棚に押し込んだ後、売店で買った朝飯を広げる。
トレーナーはサンドイッチを食べながらパソコンを引っ張り出してなにやらチェックしている。横顔を眺めてみるが特に反応は帰ってこない。平日朝の便はこれから仕事で出張する人やビジネスで利用する人が大半のようだ。トレセン学園の制服はちょっと浮いてる気がするが、珍しいものでもないのか誰も気にしてない。

「なんだキョロキョロして」
「いやぁこんな時間に新幹線乗ってるのも新鮮だなぁって思って」
「しばらくあるし寝てていいぞ」
「それが昨日早めに寝たらグッスリでさ。眠くないんだよ」
「そりゃいいことだ。袋の中のそれ取ってくれ」

なんだこれ?と疑問を口にするウオッカ。黄と黒の警戒色なパッケージをした見たことのない缶コーヒーだった。こんなヤバげなパッケージのコーヒーとかどんな味がするのか気になって仕方ない。

「なあトレーナー、これコーヒーで良いんだよな?」
「おう千葉県民のソウルドリンクだぞ。トレセンの周りには売ってなくてョ…品川駅の売店は神だわ」
「ちょっと飲んでみていいか?」
「おーいいぞ」

言うが早いか蓋を開いてコーヒーをあおったが、口の中に伝わってくるコーヒーの味とは絶対に違う強烈な何か。すぐに口を離してその一口を嚥下するが体の拒否反応が出て一気に咽た。思考が止まらず混乱をぶっちぎる。
新幹線の中だから吹き出すのは堪えたがこれは一言モノ申さないと気が済まない。なんだこれは???分かってて勧めたのか???

「おい!!!これコーヒーに対する冒涜だろ!!???」
「何を言う。商品化されてる時点で需要があるんだぞ」
「はぁ!?!???」

甘い、激烈に甘い。コーヒーと思って飲むもんじゃないぞコレ…。もう生クリームとかホイップコーヒーとかそういう次元じゃない。あわよくば貰っちまおうとか考えてたけどこれは無理だ。

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