依存症
大統領宮殿
執務室
今、私の目の前にいるベラスコ中将はこの内紛が片付いた後、大将という偉大なる階級を通り越して元帥杖を持つことを約束されている。
彼はこの国で随一の軍人になるわけだし、そのポストは統合参謀長という階級に恥じないものになるだろう。
…"だろう"というのには理由がある。
まだ内紛は片付いていないし、私はベラスコを信頼しているが信用はしていない。
それはウゴも同様だ。
もし心を許せるヒトがいるとすれば、幼い頃から私によくしてくれたタマンダーレだけ。
タマンダーレ、タマンダーレ。
私の大切なタマンダーレ。
彼女が隣にいないだけで、こんなにも心寂しく思う事になるなんて思わなかった。
だがそれももう少し、もう少しで終わる。
彼女は今、最後の任務を終えてこちらに帰ってきていた。
後のことはベラスコの軍隊と、顔も知らない新任KANSENだけでカタがつく。
私の頭の中はタマンダーレの事で一杯だ。
彼女が帰り道襲撃を受けないか、或いは不意の事故に遭わないか心配でたまらない。
今すぐ彼女に会いたい。
会いたくてしょうがない。
彼女に抱きついて、あの香りに安堵して、今夜はオイスター・ロックフェラーを作ってもらおう。
いや、いけない。
彼女は戦闘で疲れてる。
今日は早めに休んでもらうべきなんだ。
だから…ああ、どうしよう。
誰に料理を作らせる?
できることなら任務を終えた彼女にとびきりのご馳走を用意して待っていたいが、一体どの料理人なら信用できる?
この国の国民は1人残らず私を恨んでる、恨んでるに決まってる。
私も私でそれだからこそ恐怖で敵も身内も縛り上げてきた。
今更タマンダーレ以外に信用できる人間なんかいない!
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