アルバイトはじめちゃいました!
数日後の放課後。
つむぎは小さいCDショップにいた。学校の制服とは別の制服を着て。
ことねに紹介されたバイトの初日だ。
CDショップの店員としてレジ打ちや商品の補充を任されている。この店はつむぎもよく使っているため、場所はなんとなく把握している。
はじめてのバイトに若干の不安も抱きつつもUnreallyをやるために、よーしかんばるぞと心の中でつぶやく。
自動ドアが開く。
お客が来たことに気付きいらっしゃいませーと挨拶をする。
そこには見たことのある人物がいた。
黒葛さやだ。隣の席だが始業式の日の一声以降、彼女の声を聞いたことがない。
彼女はこっちには目もくれず、お目当てであろうものを探していた。
そういえば彼女は休み時間音楽を聴いて過ごしていたなと思う。どんな音楽をいつも聞いているのだろうかと少し気になる。
さやは一つのCDを手に取りレジであるこちらに向かう。
さやはCDを差し出す。つむぎのことは分からないのか興味がないのか何の反応もなかった。
差し出されたCDを見る。黒い薔薇が描かれたジャケットにDescreation 神咲レアという文字が書かれている。
つむぎはこのCDを知っている。
最近発売されたばかりのCDで、Descreationはアルバム名、神咲レアはつむぎもよく知ってる歌手の名前だ。
ただの歌手ではない、彼女神咲レアはアンリアルドリーマーの一人であり、登録者は300万人を越えるトップクラスのアンリアルドリーマーの一人だ。
シンガーソングライターとして活動しており、ライブ配信やMV以外は滅多に本人の姿を見ることができない。
しかしその圧倒的歌唱力、楽曲の美しさ、容姿から黒薔薇の歌姫という異名を持つ。
「あの……早くしてくれませんか……」
「ああ、すいません! えっと1532円ですっ」
ふと、じっとCDを観察していたらしいつむぎはさやに声をかけられ、慌ててレジを打つ。
袋に入れ渡すとさやは手に取りすぐさま店を後にした。やはりつむぎには気づいてなかった。
◇
バイトをはじめてから数日が経った後の学校の休み時間。
つむぎはいつものように、Dreamtubeでアンリアルドリーマーの動画をみていた。
◆月まで飛んでみた! │もふもふあにまるず
「よい子のみんなー元気にしてるか!もふもふあにまるずのボス!ウルだ!」
三人の少女が動画に映る。場所は夜の森。その三人は全員、動物の擬人化のような見た目をしていた。
ウルと名乗った少女は元気でギザ歯が特徴的な狼の女の子だ。
「スゥでーすよー……むにゃむにゃ」
「開始そうそう眠そうけんね、うちはシマリばい」
垂れたうさぎの耳に両目が長い白髪に隠れたうさぎの少女スゥが気だるそうに言い、ポニーテールにリスの大きい尻尾を持つリスの少女シマリが追って挨拶をする。
もふもふあにまるず。
そう名乗る彼女たちはチャンネル登録者500万人を越えるトップクラスのアンリアルドリーマーだ。
通称もふあにと呼ばれている。
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