誰かのため
「それで私のところに来たの?」
「相談できるのが咲夜ちゃんしかいないから……」
Unreallyに来たつむぎは、咲夜のところにいた。
咲夜は相変わらず人気のないこの駅で、路上ライブをしている。
咲夜はこの数日いつもここにいた。
ここでギターで演奏をし、歌っていて、それをつむぎは見つめていた。
その後どこかちょっと一緒に歩いたり、遊んだりしたが、会うときは決まってここだった。
持っていたギターをしまい、咲夜はつむぎの方を見つめる。
「やりたいこと、ないの?」
「あるよ、もふあにみたくやってみた動画とかお散歩動画、料理動画にゲーム実況!……でも一つには絞れないよぉ」
やってみたいことはたくさんある。
可能なことから自分にはむりなことまで。
でもだからこそ多すぎてなにがしたいのかがわからない。
「で、どう? アンリアルドリーマーやってみて」
咲夜はつむぎの顔を見つめ、少し間を置き話題を変える。
「うん、応援してくれる人がもういてくれて嬉しいし……それに答えたいなって思うよ」
それはもちろん、リアルの友達であるひなたやことねの事もあるがそれだけではない。
自己紹介動画には少しだけだが
「かわいい見た目にファンになりました!」
「つむぎちゃんこれから応援するね」
「ツムツムカワイイヤッター」
などのコメントが寄せられていた。
それを見て、自分がアンリアルドリーマーになったことを自覚する。
今の自分はアンリアルドリーマーを見るただのファンではない。
自分自身もアンリアルドリーマーなのだと。
「ならそれを励みに次の動画を考えてみればいいんじゃない」
「そうだね」
ファンの期待に応える。
それが今つむぎのやりたいことなのかもしれない。
「そういえば咲夜ちゃんはどうしてアンリアルドリーマーになったの?」
ふと疑問に思った。
「私はね……ただ自分の音楽を残すために動画をとっているんだ。誰かのために作った歌じゃないから誰にも聞かれなくてもいい……けどそんな曲でも、誰かの心に響く可能性があるなら嬉しいなってその為に残してる」
「そうなんだ……」
「そしたらつむぎがやってきて、少しだけ考えが変わったんだ」
「わたしが?」
少しだけ頬を緩ませる咲夜。
きょとんとするつむぎ。
「ここまで誰かの心を惹き付けられたなら……もうちょっと誰かのための動画を作ってもいいかもって……そう思えた。つむぎのおかげ」
真剣に咲夜は言う。
その眼差しにつむぎは頬を赤くする。
「そう言われるとちょっと照れるかな//きっと咲夜ちゃんの実力ならすぐに人気アンリアルドリーマーになって有名人になっちゃうよ!」
「ふふ。じゃあつむぎも一緒に人気Uドリーマーになってくれない?」
「わたしが……?」
自分が人気Uドリーマーに……
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