ハーメルン
或る小説家の物語
scene.7 カウントダウン

2017年、東京___

 「天知から話は聞いているが、墨字なら俺の腕なんか借りなくてもシナリオの1つや2つぐらい作れるだろ?」

 電話越しに久々に聞いた黒山の声。話を聞けば次の映画の構想について相談したいということだった。しかもそれは、短編映画を主戦場としていた黒山にとっては初となる“長編映画”の話。

 「“映画監督・黒山墨字”にとって記念すべき“大作映画”になるんだぞ。本当に良いのか、墨字?」

 これまで脚本から演出、果ては編集までをほぼ全て1人でこなしながら映画を撮ってきた男が放った言葉は、あまりに意外なものだった。

 『お前の脚本(シナリオ)じゃなきゃ駄目なんだ』

 それまで貫いてきた自分の流儀を変えてまで、黒山が作りたい映画とは何なのか。俺の中でその感情は“期待”という形で膨れ上がった。

 「取りあえず一度会って話を聞こう。いつなら会える?」



 黒山の映画を通じて、俺はようやく自分の中にある “呪い”を解くことが出来るかもしれない。そんな気がした。

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