帰還した仲間
農作業が終わり、汚れた身体をお風呂で洗い流す中間棲姫達。春雨も義脚の中に土が噛んでいないことを確認しつつ、一度消した後に再構築して綺麗さっぱりに洗い流した。
初めての農作業ということで、どうしても慣れている者と比べると汚れが目立っている。深海棲艦の特性上、汚れた服も消してしまえばすぐに元通り。お風呂に入る理由は汗を流すことと気分的な話である。
「ふぃー、今日もいい仕事したな」
「お疲れ様、竹。やっぱり力仕事には貴女の力が必要ね」
「松姉ぇの丁寧な仕事もありがたいぜ。ホント、お疲れさん」
人目を憚らずに湯船の中でイチャつく松竹姉妹ではあるが、この2人がこういう形で成立しているのは周知の事実。この農作業中も2人1組で常に作業していたため、これもその延長線上と思うことが出来た。
ジェーナスは何も感じず、薄雲も微笑ましいと感じていると話していたのを思い出し、春雨は納得した。あの関係が溢れた感情から来る共依存だとしても、それを恋愛という形で昇華しているのなら別に普通なことだし、あの距離感も微笑ましく感じる。自身にも抱えるものがあるからこそ、容易に理解出来た。
「春雨ちゃん、初めての畑仕事はどうだったかしら。楽しかった?」
「はい、本当にやったことが無いことだったので、とても楽しめました。艦隊で戦っている時とは違った疲れがありますけど、こういうのもいいですね」
「そうでしょうそうでしょう。自給自足、楽しいわよねぇ」
中間棲姫は他の深海棲艦のように侵略のことなんてまるで考えておらず、ただ生きていくだけというこのスローライフを心の底から楽しんでいるようだ。
溢れた艦娘の保護もその一環。戦いに身を寄せ、結果的に心を壊した艦娘達をその道から引き離し、のんびりと生活してもらうための施設として管理している。共同生活というのも楽しいと感じているからだ。
現に、今この施設に住う艦娘で、中間棲姫のやり方を否定する者は誰1人としていない。心の奥底では、艦娘も戦いを辞めたいと思っているのかもしれない。
「またお願いするかもしれないけど、いいかしらぁ」
「はい、またやらせてください。その時は、私も種蒔きからしたいですね」
「調達してくれると思うわぁ。竹ちゃんが言ってた通り、今日か明日くらいには」
と、話している最中に風呂の前が少しバタバタと騒がしくなる。
「走ると危ないわよぉ。ヨナちゃん、そんなに慌ててどうかしたのぉ?」
足音だけで何者かをきっちり把握している中間棲姫である。春雨や松竹姉妹も、何やら急な用事があるのかもと少しだけ身構えた。
「姉姫さぁん、あの人達が帰ってきたのぉ」
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