恥ずかしいし照れもする
「すぴー……」
昼寝から目を覚ましたとき、俺の目の前では天使と見紛うほどの美少女が、寝息を立てて存在していた。
そう、存在していたのだ。
こんなもんがこの世に存在してていいのかと思わず抗議したくなるほどの、それはそれは違法なかわいさの少女がそこには居た。
寝落ちしてから最初に見る光景がコレとか心臓止まるわ。
「……ボイスロイドも寝るのか」
横に寝転がったまま、目を開けてじっくりと彼女を観察する。
俺と同じく横向きの体勢であるせいか、床の方に向いている頭の包丁アクセサリーが、ズレて微妙に外れかかっている。
「んぅ……」
普通の人間と同じように、すやすやとお昼寝を続けるその姿は、日常的かつ非日常も感じさせる異様な光景だった。
自分の家で女の子が眠っていて、しかもその本人はなんと俺の所有物だというのだ。
改めて考えてみてもやはり信じられないというか、こうしてきりたんを目の前にしても実感が湧かない。
「こんな美少女が、俺の所有物……」
まずこの少女に対して使う”所有物”という言葉の響きが、かなり淫猥というか常軌を逸している感じが強い。
所有物という事は、つまり俺のモノ。
自分の物であれば当然、何をどう使おうが所有者の自由なわけだ。
寝ていようが起きていようが関係ない。
PCを起動させるときにいちいち機械に『起動させていいか?』などと質問したりはしないだろう。
所有者自身の都合で、つけたり消したりする物。
それこそが所有物というものだ。
例えばそれが女の子の姿をしていたとして、いつどのタイミングで体のどこの部位に触れようが、誰も俺を咎めることは出来やしない。
「きりたん。……起きてるか、きりたん」
小声で語り掛けてみても反応は無し。文字通りスリープモードってやつなのだろうか。
「…………うおっ。や、やわらか……っ」
手のひらでそーっと彼女の頬に触れてみた瞬間、俺の心臓はハチャメチャに強く高鳴った。
とても柔らかい。
健康的な色の肌で、触り心地としてはもちもちしている。
人差し指と親指で軽くつまんでみると、まるでマシュマロを触っているかのような感覚を覚えた。
なんだろう、とても良くない事をしている気がする。
イケナイ行為をしてしまっている様な、普通なら許されないことをしている時みたいな、異様な緊張感だ。心臓が煩い。
「……っ」
起きないとイタズラしちゃうぞ、なんてキモいことを言う勇気はない。
もっとキモい事をしている以上俺は、彼女が起きないように気を張りつつ、自分の欲を満たすことが最優先なのだ。
そもそも寝ている相手に警告をして許された気になろうとする方がおかしいのだ。
寝込みを襲うなら相応の罪を犯す覚悟をしろというものだ。
「……かわいい」
きりたんの頬を、手のひら全体で味わいながら、ジッと彼女の顔を見つめている。
何だコイツ可愛すぎる。
ほっぺもちょっとぷにぷにし過ぎじゃない? パン生地でも触ってるのか俺は。
少しだけ口を開けたまま寝てるところもかわいい。栗みたいな口しやがって……。
なにをしても許される──いや、そもそも罪にすらならない。
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