方舟vs神楯④
「こちらチェン。」
そう宣言が聞こえるや否や、辺りには3つの気配。その内の1つは赤い閃光と共にイージスの前に現れた。しかしそれはイージスには既知の攻撃。初見ですら防がれた攻撃が彼女に通用する訳がない。無論、チェンはそれを承知の上であった。すかさず次の攻撃に移る。
「… 絶影。」
10の煌めきがイージスを襲う。瞬きする間もなく放たれたそれを、イージスは盾で、槍で受け流す。
「…絶影。」
先程までの戦いを見て何も感じないチェンではない。彼らの尽力に応えるように、チェンは限界を超えて技を放つ。10の煌めきは次に20となってイージスへ迫る。しかし、彼女にはそれでも届かない。
「…絶影!」
骨が軋み、肉体が悲鳴を上げる。そんなこと知ったことかとチェンはさらに攻撃を放つ。イージスが自身へ迫る攻撃を対処しようとしたその時、彼女の身体はピシリと動きを止める。横を見るとそこには半透明な盾を持った1人のヴィーヴル、サリアであった。
「凝固しろ!」
そう力強く叫びアーツの発動に全力を尽くす。今までそれを使うに値する敵がいなかったため使われることはなかったが、サリアの盾はアーツロッドとしての運用も可能である。サリアが文字通り死力を尽くし、イージスの体内にあるカルシウム元素を操作する。身体中に1%も存在するそれは、イージスの動きを完全に固めるには十分すぎる。イージスという水は今、完全に凍りついた。
驚く暇もない。イージスは無理矢理腕を動かし、チェンの攻撃を受け流す。盾を構えた右腕は、その骨が嫌な音を立ててひび割れる。30にも及ぶチェンの攻撃全てを捌くことは叶わなかったがしかし、少なくない傷を負う。半ば意識を失いかけているチェンを盾で吹き飛ばし、そのまま槍をサリアへ穿つ。その際、槍を持っていた左腕に激痛が走るが、イージスをこれを無視する。槍は盾へぶつかるが、アーツの発動に全てを尽くしていたサリアは踏ん張ることなどできず、盾と共に吹き飛ばされる。2人とも、自身の限界を超えて力を使っていたのだ、もう戦線に戻ることはないだろう。
サリアが気を失ったのか、体が動くようになる。右腕の骨はひびが入っているものの、折れているわけではない。イージスが『魔法』で左手に槍を創ろうとしたその瞬間、ホシグマがイージスへと自身の盾を叩きつける。イージスは油断なくそれを受け流すが瞬間、ホシグマは盾を捨ててイージスの左手と盾を掴む。
「貴様には悪いが、力勝負に付き合わせてもらおう!」
そう叫びイージスを押し始めようとする。しかし、どこにそんな力があるのか、彼女はびくともしない。彼女は一言、
「それは…助かります。」
と言うや否や、イージスも盾を捨て、そのままホシグマの手首を掴んで投げ飛ばす。
3つの気配の持ち主は全て現れたが、まだ油断はできない。
「(まだです!まだ切り札であろうあの少女が来ていない!彼女が来るまでは気を緩めてはいけない!)」
そう自分に言い聞かせるイージス。その次に現れたのは一匹の巨大な化け物と、辺りを炎で包んだ巨人であった。
「そう簡単私達は負けんぞ!」
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