料理人
「あ、あの。スカジさん!」
「あら、グムじゃない。どうかしたの?」
「その、変なこと聞くんですけど、」
ーーーお師匠さんの所にご飯を運んでもらってもいいですか?
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これはまだイージスがロドスの精鋭達と演習を行う前のこと。つまり、イージスがロドスに到着してから演習が始まるまでの4日間のある日に起こった出来事である。
「流石にこれから戦うであろう相手と同室は気まずい」ということで、渋々個人部屋に居たイージスはいつ隣人が自分の元へ訪れるのかビクビクしていた。しかし、1日経ってもそんな素振りが無かったことから、完全に気を許して部屋でのんびりとしていた。どうやら今は間食用のお菓子を作っているようだ、鼻歌を交えながら、手慣れた手つきで生地を作っていた。型を抜いたそれをオーブンに入れてひと段落ついた頃、ふと彼女は部屋の扉に手紙が落ちているのを見つける。とはいえ、現在ロドスでそんなことをする人物など1人しかいない。一体なんの用事かとイージスは手紙を開いた。
ー師匠へ
今日の昼、グムという子があなたの部屋に食事を運んでくるから、昼食は用意しないでおくこと。逃げたり居留守をしたら承知しないわよ。
ースカジ
「ーほへ?」
死刑宣告であった。
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「うー…スカジさんに頼まれたけど、本当に私が行って良かったのかなあ?」
そう1人ぼやきながらグムは料理を持ちながら廊下を歩く。今日の献立はシチューのようで、湯気を立てながら美味しそうな匂いを漂わせている。疲れからか、さっきまで項垂れながら廊下を歩いていた職員がその匂いを嗅ぐや否や、食堂まで全力実装を決め込んでいる。それを見て苦笑を浮かべながら先程の会話を思い出す。
『折角だから、貴方が運んでくれないかしら?』
『え?グムは大丈夫ですけど、お師匠さんは大丈夫なんですか?人見知りって言ってましたけど。』
『大丈夫じゃないわね。』
『ええ…。』
『ほら、明日は師匠と演習するから、今会うのはお互いに気まずいのよ。それに、私があの人をここに連れてきたのは、あの人の酷い人見知りを治すためだから。』
『なるほど。じゃあグムが持ってきますね。』
『ええ、折角だから明日のためにプレッシャーでもかけておいてくれると嬉しいわ。』
『ええー!無茶言わないでくださいよ!』
『ふふ…期待してるわよ。それと、次からは敬語なんて使わなくてもいいわよ。』
「それ時にもらったこれだけど、スカジさんって思っていたよりもお茶目な人だったんだ。」
料理と共にトレーの上に乗った一枚の紙。題名は『師匠の取り扱い方』。
「『大きな声をあげると逃げ出します』『あまり目線を合わせないようにしてあげましょう』『接触は控えてください』って、お師匠さんって人間だよね?」
自分の師匠に対して結構な言い草である。そうこうしているうちに目標の扉まで到着した。グムは扉をノックしようと片手を上げるが、その前に中から声が聞こえてきた。
「ああどうしましょうどうしましょう⁉︎なんでこんなに急なんでしょう!普通こういうのは1ヶ月前とかに約束するものではないのですか⁉︎」
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