ハーメルン
スカジのお師匠様
会議②

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「では、まずは私の要求からさせてもらいましょう。私は武力的にも、技術的にも、ロドスには一切の協力をしません。これは絶対条件です。たとえ、ロドスが崩壊しようが、弟子のスカジが死の危機にあろうが、一切の干渉を行いません。まあ、その心配は全くしてませんが。」

そう話始めたイージス。彼女の目から、ここだけは絶対に譲らないという意思を感じる。

「おや、ずいぶんと買ってくれるんだね。」
「そんなの、貴方が今の私に臆せず会話できているだけで十分です。」

今のイージスはかなり強いプレッシャーを放っている。並の傭兵なら意識を保っていられないであろうこの空気の中、彼女に怯えることなく相対するドクターは武力はないけれど、間違いなく歴戦の戦士であった。

「そうかい。武力的、技術的とはどういうことだい?具体的に聞かせて欲しい。」
「言葉の通りです。レユニオン?でしたか?それを始めた組織との抗争の際、私は戦闘行為や物資供給等の協力を行いません。もちろん、相手に協力する、ということもしません。私は、完全なる中立の立場として存在します。そして、医療や化学技術に関する活動を行いません。ここのオペレーター達に武器を作ることはありませんし。たとえ、私が鉱石病の治療法を知っていたとしても、その情報は公開しません。」
「ー治療法を知っているのですか⁉︎」
「いえ。しかし、私はそれを創ることができる、それほどの力を私は有しています。」
「っ、ならどうして「アーミヤ。」っあ、ご、ごめんなさい。」
「…いえ、謝らないでください。貴方は間違っていない。間違っているのは私ですから、どうか、謝らないでください。」
「…はい。」

イージスの力は強力だ、いや、強力すぎる。彼女が本気になれば、おそらく世の中の全ての争いや病を無くすことすら可能だろう。しかし、だからこそ彼女の力は中立を保たれねばならない。ひとたび彼女の天秤が傾けば、他方には絶対の勝利が、その他には覆らぬ絶望が舞い降りる。それは、彼女の望むものではない。
彼女は何万もの命を見殺しにしてきた。彼女は何万もの命を見殺しにしている。彼女は何万もの命を見殺しにしていくだろう。負い目を感じているのだろう、イージスの瞳には深い悲しみ、後悔、懺悔の念が見える。しかし同時に、そこには揺るがぬ決意があった。理解はされない、納得もされない、間違っているのは自分だと、誰よりもイージス自身が分かっている。赦しを請うことはしない、否、できない。そんなイージスの様子を見て、アーミヤはこれ以上何も言うことができなかった。

「うん、話を戻そうか。まずは返答を、君のその要求は呑もう。要は、君はロドスで生活をするだけの一般人として扱えばいいって事でいいかい?一般人に戦闘や支援を要請するほど僕達は困ってないからね。」
「その解釈で構いません。すると問題になるのが、ここで生活するのにかかる費用なのですが…。」
「君は客人だから、その辺の出費はこちらで持つよ?」
「今はそれでも構いませんが、正直いつまでここに居るか私にも分からないのです。流石に何年も住むことになったらこちらが居た堪れません。」
「んーじゃあ家賃でも払ってもらおうかな?ただ、客人として招いたのだから、始めの1ヶ月はこちらが負担させてもらうよ。あと、今まで賃貸なんてした事ないから、詳しい家賃は後で教えさせてもらうよ。構わないかな?」

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