ハーメルン
呂布を名乗るウマ娘
6章:逆襲(ぎゃくしゅう)

 トレセン学園を去っていった1人の生徒。
 彼女の最後に残した言葉は、シンボリルドルフの心に暗い影を残していた。


 ―――私にとってあなた達は太陽だった。


 一見すればそれは憧れと尊敬の念を込めた言葉に見える。
 だが、実際の所は呪いと怨嗟の言葉だった。

 遠くから見ている時はとても綺麗なものに見えた。
 だからそれに近づこうとした。
 神話のイカロスのように夢中になって、蠟で出来た翼をこしらえた(一生懸命に努力した)

 でも、近づけば近づくほどに理解させられた。
 偽りの翼では、近づくことすら許されず焼き尽くされるだけだと。
 自分達は、飛んで火にいる羽虫程度の存在でしかなかったのだと。
 嫉妬の炎に身を焦がされながら理解した。

 太陽とは、触れてはならぬ三凶(タブー)だったのだと。


 ―――知っていますか? 星は昼間に光っていないんじゃないんです。ただ太陽の光が強すぎるから、()()()見えてないだけなんです。


 強すぎる光は、他の光を塗りつぶす。
 彼女達が影ならば存在することも出来ただろう。
 だが、彼女達はしっかりとした才能()を持っていた。
 それ故に、昼間の星々は誰からも見られることがない。


 ―――罵倒ならいくらでも耐えられる。でも、誰からも見向きもされないのには耐えられないんです。


 三凶(タブー)に負けても、誰も非難したりしない。
 だって、初めから誰も期待なんてしていないから。
 触れる方が馬鹿だとみんな知っているから。
 罵倒よりも、非難よりも、無視というものは人の心を深くえぐる。


 ―――恨みます。あなた達と同じ時代に生まれてきてしまったことを。


 きっと、その想いは彼女だけではないのだろう。
 他の同じようにやめて行ったウマ娘達。
 いや、それだけでなく、まだ走っているウマ娘達でさえ。


 ―――もしも叶うなら、私もあなたのような……日輪になりたかった。


 太陽を呪っている。



「……ルフ……ルドルフ! ボサっとするな!!」

 セキトの怒鳴り声で、思考の海から目を覚ましたルドルフは一度瞬きをする。
 それだけで、いつもの冷静な思考に戻るには十分だった。

「ああ、すまない。少し考え事をしていた」
「フゥン、貴様が何を考えていようが、オレ様の知ったことではない。だが、このオレ様の時間を無為にすることは許さん」

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