ハーメルン
呂布を名乗るウマ娘
6章:逆襲(ぎゃくしゅう)

「すまないね。だが、撮影には一切の支障はないよ。小学生へのお年玉企画だというのに、お年玉(私達)が貧相なものでは申し訳が無い。誠心誠意をもって相対しよう」
「フゥン……」

 いつものように外面は完璧なルドルフに、セキトは何か言いたそうに目を細めるが、結局は何も言わずに鼻を鳴らすに止める。今日は、以前に陳宮が名前の修正を食らった正月テレビ番組の撮影の日である。中二病な所のあるセキトは、テレビで目立てる機会を何だかんだで楽しみにしているのかもしれない。

「ほら、2人ともあっちでスタッフさんが待ってるから行くわよ。まずは、おチビちゃん達からの質問コーナーをやるんですって。フフフ、バッチグーな回答を連発しちゃうんだから!」
「貴様は、まず砂利(じゃり)共に分かる言葉で話せ」
「分かってるわよ。ナウでヤングな言葉はもう少し大人になってからよね」
「………行くぞ」

 違うそうじゃない、と言いたそうな顔をするセキトだが我慢する。
 砂利などと子供達を見下す呼び方をしているが、一応は子供達を待たせないという年上としての気遣いぐらいはするらしい。

和気藹々(わきあいあい)とした姿の方が、子供達の目には良く映るだろう。以降(いこう)は喧嘩は無しで行こう(いこう)
「…………」

 ルドルフが何か言っているが、セキトは無視をする。

「? ああ、今のは以降と行こうをかけてみたんだが」
「自分から説明をするな!! ただでさえつまらん洒落が、さらにつまらなくなるわ!!」
「馬鹿な…! 私の妹なら『良く分かんないけど、面白ーい』と言って喜んでくれるというのに…ッ」
「貴様、まさか砂利共に今のを披露するつもりだったのか…?」

 子供達と距離を近づけるために、今日のために、休憩時間を削りながら考えて来た駄洒落を否定されショックを受けるルドルフ。最近、謎のコンディション低下で悩んでいたルドルフのトレーナーに謝って欲しい。

「砂利共が会いに来たのは、画面越しに見ていたオレ様だ。ヒーローのマスクの下を雑に見せられても興醒めするだけだ。知りたいのなら、そっちが実力で仮面を剥ぎ取ってみせろ」
「さっすが、セキトちゃん。ヒーローの素顔があらわになるのは、敵との死闘の最中って相場が決まってるものね」
「なるほど……私達と同じ場所に立った時のお楽しみという訳か。ならば、今日は愉快で親しみ易いルドルフお姉さんではなく、皇帝シンボリルドルフとして接するとしようか」

 子供達は憧れのヒーローに会いに来ているのだから、キャラ崩壊はやめろ。
 そういうのはもっと親しくなった時に見せればいい。
 セキトが言ったのはそういうことである。

 人によっては違う意見もあるだろうが、今回ばかりはマルゼンスキーも同意する。

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