ハーメルン
呂布を名乗るウマ娘
7章:呂布(りょふ)

 きっと、彼女の父が生きていれば、こうしていただろうから。

「もう…しないから! パパとママの言うことを……ちゃんと聞くから…! 好き嫌いしないで…野菜も残さず…食べるから…ッ! ちゃんと…いい子にするからぁ…ッ」

 お願いだから帰って来てよ、パパ。

 そんな声にならない言葉を受け止めながら、私は誓う。
 死者は蘇らないし、私もセキトのパパにはなれない。
 だから、前に向かって歩んでいくしかない。
 だが、その道の中で必ず。

 ―――セキト。

「……なぁに?」


 ―――2()()()天下無双になろう。


 天を飛ぶウマ娘の異名通りに、空高く舞い上がって。
 天国にいるお父さんにも届く程の歓声を浴びよう。
 私達が、天下無双だと。

「フ…フハハハハ! 天下無双だというのに2人でだと? 2人と無いという意味が矛盾するぞ。ああ……だが、その無謀を平然と告げるからこそ、オレ様の――」

 普段の調子を取り戻し、上目遣いでこちらを見上げセキトが笑う。
 それは子供のような無邪気な笑みでも、いつもの傲岸不遜な笑みでもない。


「―――()()()()()だ」


 1人の魅力的な女性の笑みだった。

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