9章:天下無双
『ミスターシービー!! ミスターシービーが先頭に立った!! だが、負けじとマルゼンスキーとシンボリルドルフが食い下がるッ!!』
『今年の天皇賞秋! 去年のセキトに引き続き伝説が生まれるかもしれません!?』
『このまま行くか!! このまま終わらせるか!! 三強の時代を終わらせるのは、やはりこの娘か!?』
楽しい。
楽しくて仕方ない。
ただただ、走ることが楽しくてしょうがない。
『さあ、最終コーナーに来たぞ!! ミスターシービーが――アッと!?』
『何ということでしょう!? ミスターシービーが大きくバランスを崩して――いやッ!?』
大きく体を傾け、地面に倒れ行くシービーの姿にレース場全体から悲鳴が上がる。
しかし、当の本人の顔はどこまでも晴れやかだ。
そして、それを証明するように彼女は決して地面に崩れ落ちない。
『違う! 違います!! ミスターシービーはバランスを崩したのではなく、大きく体を傾けることで減速抜きでカーブしました!!』
『信じられない技術です! 普通は出来ませんし、出来てもやりません!!』
定石なんてどうだっていい。
やったらいけないことなんてアタシは知らない。
タブーなんて知っても無視するだけ。
踏み込んだらいけない場所にスキップで入っていく。
『そして今度は直線で一気に加速していくッ!!』
『細かくステップを踏み、一気に加速する走り方はマルゼンスキーを彷彿させますねぇ!』
こんな走り方をしたら面白そうだなぁ。
彼女みたいに出来たら便利そうだなぁ。
よし! じゃあ、やってみよっか。
『おっとぉッ!? 今度は大幅なストライドに変わったぞ!!』
『この飛ぶような走り方は……まるでセキトのようです』
『悠々と先頭を行くミスターシービー! しかし、後続の2人も決して離されない!! まだ逆転の可能性はあるぞッ!!』
うーん、後ろが邪魔だなぁ。
よし、ルドルフの技でも借りてみよっか。
『だが許さない!! 完璧なコース取りで後続の追い上げを邪魔する!!』
『これは……シンボリルドルフがよく見せる技術ですね。相手のコースを予見して先に潰す。そうすることで逆転の目を潰す嫌らしい技です』
『なるほど! 今のミスターシービーはマルゼンスキー、セキト、シンボリルドルフの走りを真似ていると………え?』
今なら何でも出来る気がする。
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