9章:天下無双
いーや、何でも出来るんだ。
ならやってみよう。
使う必要? 使う意味?
そんなの―――知ったことじゃない!
『場主さん、つまりシービーの今の走りは…?』
『ライバルの技術を……いえ、今まで見たことのある技や思いついた走り方を』
アタシのライバルだって言ってたじゃないか。
アタシのレースで重要なのは、アタシの走りで大切なのは――
『―――好き勝手に試していますね』
―――楽しいか、楽しくないかだけッ!!
「アハハハハハハハッ!!」
『笑っている…ッ!? 笑っています!! 走っている最中だというのに、放送席まで聞こえる程に声を上げて、ミスターシービーが笑っていますッ!!』
『常識破りで型破り、だというのに一切の隙が無い……まさに天衣無縫』
さあ、あれをやろう。次はこれをしよう。
何でもできる、何でもやりたくなってしまう。
楽しくて楽しくて、笑いが止まらない。
出来ないことなんてなんにもない。
まるで自分が―――神様になったみたいだ。
『そして今! 笑い声をあげたまま―――ミスターシービーがゴールしたぁあああッ!! 遂に! 遂に! 三強を打ち負かす娘が現れましたッ!! その娘の名前はミスターシービー!! ミスターシービーです!! 大阪杯、天皇賞春、鳴尾記念、宝塚記念の長い長い冬を乗り越え、自らの世代の意地を証明してみせましたッ!!』
長きに渡る帝国の圧政からの解放。
偉業を為した英雄へと向けられる、怒声にも似た歓声。
それを浴びながら英雄たるシービーはゆっくりと勝利の凱旋を行う。
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