ハーメルン
山あり谷ありウマ娘 〜気付いたら脱サラしてトレーナーになった話〜
トレーナー「新人って二人以上担当出来たっけ?」
桜木「いやー、酷い目にあったー」
襲撃、アグネスタキオンとの熱い攻防(防戦一方)を何とか凌ぎ、無事に昼休みを迎える事が出来た。静かな噴水の音を聴きながら、本日二本目のガラナとサンドイッチを手に持った。
確かにタキオンは噂通り、薬品の開発をしているし、それを他のウマ娘に強要している節もあるかも知れない。けれど百聞は一見にしかずという言葉通り、会って見なければ分からない事もある。彼女から感じる熱意は、本物だった。
桜木(それにしても、あんな演技っぽかったら逆に怪しいって)
色々な噂があるが、アグネスタキオンは敢えてそれを逆手に取り、他人を自らに寄せ付けていない様な気がした。出なければ、わざわざ運びにくい意識を失った成人男性を運び、脅しまがいの事をしていた意味が無い。
彼女の本心がどうであれ、その真意を確かめなければ行けない気がする。
「お隣よろしいでしょうか?」
桜木「どうぞー.........?マックイーン!?」
マック「はい!メジロマックイーンですわ!」
綺麗な芦毛の髪を靡かせながら、笑顔と元気な挨拶を俺にして、隣に座るメジロマックイーン。どうしたのだろう。何時もならばカフェテリアで食事をしている筈なのに.........
桜木「今日はどうしたんだ?何か悩みでもあるのか?」
マック「いえ!ただ、トレーニングの時は顔を合わせられないので、せめて昼食くらいはご一緒にと.........ダメ、でしたか.........?」
おいおいおいおい、いつの間にそんな必殺技を引っさげてきたんだお嬢ちゃん。男はそう言うのに弱いの知ってるのかい?
桜木「まさか、むしろ。一週間も会えなかったらどうしようって思ってた所なんだ。来てくれて嬉しいよ」
マック「!ふふ、そう言っていただけると、私も安心いたしますわ」
そう言いながら、マックイーンは膝に乗せたお弁当の蓋を開ける。そこには、カフェテリアのメニューが詰められていた。そのどれもが、しっかりと緻密に計算し尽くしたカロリーと、吸収効率を加味した特性献立表に載っているものだ。
桜木「ちゃんと実践してるんだな、偉すぎる」
マック「ええ、私のために、トレーナーさんが頑張って作ってくださった献立表ですもの!」
マック「それに.........貴方のおかげで、毎日お腹が満たされて、幸せですわ.........ふふ」
箸でおかずをつまみ、それを口に運ぶマックイーン。とても幸せそうだ。見ているこっちまで幸せになれる.........それと同時に、昔は飯食ってるだけで幸せだったのに、大人になったと感じさせられる。
桜木(とは言っても、考えなきゃならないのは、デビューまでの期間だ。猶予は長くて一年。短くて半年だ)
二人で静かな昼食を食べながらこれからの展望を考えている内に、一つの不安が浮かび始めた。
桜木(.........?あれ、新人トレーナーって二人以上面倒見れたっけ?)
汗が流れる。どうでしたっけ?何とか言えよ三女神。
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