8.剣とエンチャント
「お陰で助かった! あの薬じゃなきゃ死んでいた!」
暫くスライムとしんみりしていたら、村人が戻って来た。 また増えた。 繁殖したか。
「俺に出来ることなら何でも言ってくれ……と、その前に言わせてくれ」
「うん。 知らない」
「知らないで済まされたくないんだが!? 牢屋を綺麗な住居に改造するなよ!?」
「モデルハウスって事で……牢屋にするにもさ、ほら。 VIP用的な、上級民様用的な」
「煙に巻くな!」
もう良いかなぁ。 外行きたいなぁ。
クラフターはウズウズする。 村人が増えて邪魔だ。 しかしスライムが何やら交渉している。 押し退ける気が起きない。
「まぁ、命には代えられん。 水に流す」
「助かるよ」
「他にして欲しい事は?」
「そうだな、技術者を探してる。 家造りを学びたいんだ」
「……そりゃ冗談か? 目の前にいるじゃねえか」
「それこそ冗談に聞こえるんだよ。 コイツら会話が成り立たないんだよ」
喧しい。 早く交渉を終わらせてくれ。 どうしてかスライムを置いて行けない。
「耳の痛い話だな。 だがよ、悪い奴じゃないんだろうな」
「そう願う他ない」
「釈放だ。 腕の立つ鍛冶屋を紹介するよ」
「ありがとう」
「今日は休んで行け。 日を改めよう」
「じゃあ、ここで休んでいきます」
「……今度は頭が痛くなる話だな」
終わった。 かと思えば部屋に戻って来た。
ベッドに入る。 スライムもベッドで寝るのか。 驚きだ。
しかし困った。 他にベッドが無い。 同衾出来るか。
やってみた。 出来た。 やるものである。
「美人なら嬉しかった」
ハァンと鳴かれた。
そうか。 お休みなさい。 同じ意味だろう。
日が明ける。 同じ村人が顔を出す。 また案内してくれるそうだ。
良い奴だ。 頷くと付いて行く事にする。
「凄い街だなぁ……蒸気機関? スチームパンク……」
「またよく分からない言葉を……まぁ、褒められてるのは嬉しいが」
岩壁に囲われる様に居並ぶ建造物。
大きくも小さくも無い道に、多くの村人が行き交う。
活気溢れる光景。 何より建造物の創意工夫が見て取れる。
クラフターは嬉しくなった。 建物と携わる創造主が、仲間がいるのを感じるからだ。
「おい大丈夫か!? 連れが激しく腰振ってるぞ!? 首まで激しい!」
「そういう習性なんだ。 そっとしてやって」
様々なバイオーム、世界を開拓してきたから分かる。
クラフターは環境に適応するのではなく改変、又は利用する事で己が場所を切り取ってきた。
地獄たるネザー。 深淵広がるジ・エンド。 地下。 空中。 水中。 マグマの中。 普通なら瞬殺される極限環境へも挑戦し、開拓し建設し打ち立て打ち勝つ。
崖や山、その中の開拓も経験した。 此処がソレに準じる。 さぞ整地に苦労しただろう。
知らない誰かに、クラフターは心中合掌した。
「まぁコイツらの凄さより、俺はコレが凄いと思うよ。 剣が光ってるし」
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