第2話 ニホン……?
『マスター、今のって日本語ですよね……?』
ナヴィが驚いた様子で聞いてくる。
『あ、ああ……日本語だ。というかナヴィまだ日本語覚えてたんだな。結構昔に面白がって数回教えた程度だろ?』
『私は一度覚えたことは忘れませんから。
それよりどうしますかマスター? 人間ですし、拷問でもして情報を吐かせますか?』
『ちょっと待て拷問は短絡的すぎだ。幸い……か分からないが、今のワタシは人間の見た目だ。わざわざ敵対するようなことは避けられる。
最終手段として拷問はありだが、できる限り友好的に行こう』
『分かりました』
「おーい誰と話してんだ……って、なんだそいつ? モンスターか?」
赤坂と名乗った男性はこちらに近づいてくると、ワタシの隣にふわふわ浮いているナヴィに気がついたのか、少し驚いた様子で武器を構える。
「あ、いや、えーっと、説明は難しいんだが、こいつは大丈夫だ。分類的にはモンスターに近いかもしれないが、敵じゃない。そしてワタシも敵じゃない」
「はじめまして、Mr.赤坂。ナヴィと申します。
マスター…… こちらの方のパートナーを努めております。以後お見知りおきを」
パタパタと羽根を動かしながら、赤坂さんの前までスィーっとナヴィが移動する。
「すげぇ、人語を解するモンスターか。ここまでなめらかにしゃべるのは見たことないな。しかも初めて見る見た目してんな。
ふーむ…… なるほどなるほど。使い魔みたいな感じか」
顎に手を当てて興味深そうにナヴィを見ているが、コホンと小さく咳払いをして話をすすめる。
人に会えるなんて僥倖だからな。ここがどこだかが分かる。
「で、えっと、すまない。赤坂さん。ここはどこだろうか?」
「……? どこって、イシギダンジョンだけど……? 今日からダンジョン攻略が開始したから嬢ちゃんたちも来たんだろ?」
「イシギダンジョン…… すまない、その名前に覚えがなくてな。
ナヴィ、イシギダンジョンはどこにある? サバティエリ大陸か?」
「いえ、私の持つ情報には“イシギダンジョン”なるダンジョンはありません」
「何?」
ナヴィでも知らないダンジョン? 意味がわからない。
さっきナヴィ自身も言っていたが、ナヴィは一度覚えたことは基本的に忘れないし、それこそ動く図書館のように知識に富んでいる。
まったく新しいダンジョンか……?
ダンジョンにも様々なタイプがあるし、ある日突然できるタイプのものもある。
……いや、まて。
そもそも、赤坂さんは日本語を使っていたんだ。
少なくとも異世界で日本語を使う人物はワタシは見たことがない。それこそ、ワタシが少し教えたナヴィくらいなものだろう。
じゃあ、ここは日本か?
赤坂さんが日本語を使っているという一点のみに焦点を当てれば最も有力だが、そもそも日本にダンジョンなんてあるはずがないし……
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