第十一話 勧誘
嫌な予感が的中しました!! なんですかこの少年、きらっきらした目で人を見てきます。
……嫌いな目ですね。幼いだけならともかくとして、これは純粋で、なにもかもが自分の思いどおりに行く、自分こそが正しいと思っているやつの目です。
この手の輩は大概ろくなやつはいません。歪んでないだけましですが、それはそれで面倒ごとの固まりです。
立派な魔法使いを目指してるくちですかね? だったら最悪です。
そもそも出会いがしらにいきなり人に上位古代語魔法ぶっ放してきたくせに仲間になれって本気でしょうか?
謝罪の言葉もなく、いえ、あったとしても仲間にはなりませんが、それにしたって礼儀ってもんがあるでしょうに。
……やめです。相手にするだけ時間の無駄、用件をすませてとっとと帰りましょう。
ええ、そして司書長を経由してアリアドネー上層部に今回の報酬ふっかけてやりましょう。
それでさよさんと二人ちょっと良いお店にいって美味しい物たべるんです。
「……木乃芽さんから伝言がありまして、『無事を願っています、必ず帰ってきてください、ずっとあなたを待っています』だそうです」
「木乃芽さん……!」
「無視された!?」
詠春とやらはなんだか知りませんけど打ち震えてますね、そんなに嬉しかったんでしょうか?
しかしこの眼鏡な人と木乃芽さんですか……人生わからないものですね。
少年ですか? 当然無視です。
「……それと伝言はもう一つ」
「まだあるのか? 鶴子さんからか?」
「いいえ、これも木乃芽さんです。……コホン、『信じとるけど、もしもそっちで女作りよったら、近衛、橘、青山、天ヶ崎他幹部連中みなでぶちのめしたるさかい、覚悟しいや? 二度と日の目見れんようにしたる』だそうです。あの目は本気の目でしたよ?」
おお、今度はさっきと違ってものすごく震えています。
ガタガタっていう言葉をこれ以上ないくらい身体で表現しています! 顔とか真っ青ですし。
さて……それじゃあ用も済みましたし、帰りますか。
「俺を……」
「ん?」
「無視してんじゃあ……」
はて、声が……
「ねえっ!!」
バシィッ!!
「いいぃぃぃぃってええぇぇぇぇっ!! なんだこの障壁、やけに固ぇ!!」
「ほう、不可視の障壁ですか? なかなか珍しい術をお使いになるようで」
……ああああ、どんどんめんどくさい方向に話が進んでいきます。
少年が素手で私に殴りかかってきて天球儀式結界術(仮)で自爆してわめいているかと思えば、ずっと笑みをうかべたまま黙っていたローブの男が出てきましたよ。
すいませんね、お嬢さん。やはりあなたを連れて行くのは無理そうです。
「……なんですかね。私は一仕事おえて帰るところなんですが」
「おやおや、せっかちですね。名前くらい名乗っていってはどうです。私はアルビレオ・イマ。そっちがナギ・スプリングフィールド。詠春は……知っているようでしたね。で、あなたは?」
「……クロトです。急ぎますので、失礼しますよ」
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