第七話 西の総本山
「さて……ほんならこれから関西呪術協会、緊急最高幹部会……始めましょか」
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どうも、セイです。昨晩は千蔵老人の計らいで、本山の一室をかりてさよさんと二人同じ部屋で休みました。
最初は男と女、「男女七つにして同衾せず」という言葉があるくらいです。武士じゃありませんが、そう言う関係でもありませんからね。できれば別室にしてほしいと頼んだんです。
しかし、千蔵老人の付き人で私たちを部屋まで案内してくれた神鳴流の剣士の片割れいわく、監視しづらくなるのでまとまっていてほしいとのこと。
こう言われると諦めるほかありません。怪しさ満点の私たちが屋根のあるところで泊めてもらえただけでも御の字です。
ただ、布団がひと組しか用意されていなかったのには断固抗議しました。本山の規模から考えて布団が一組しかないなんてことはありえませんからね。
これには剣士の方も眉をしかめて「あの方は……」とつぶやいたあとすぐに布団をもうひと組用意してくださいました。
とにかく、一晩明けた今朝、私は千蔵老人に連れられて関西呪術協会の総本山、その広い屋敷の廊下を歩いています。さよさんには、部屋で待っていてもらいました。
ふと、庭に目をやります。庭には桜が数多く植えられているようですが、残念ながら季節が違うのか、視界を埋めるのは緑の葉桜。花を見ることはできません。
しかしいずれ春が来て花がさけば、さぞや美しいことでしょう。
「おう、ここや」
千蔵老人が、立ち止ります。千蔵老人は昨日と同じような和服ですが、私は元の装束に着替えました。狐の面も首から吊るしています。
さすがに西洋かぶれで西の長に会うわけにはいきません。……いや、乾いているとはいえ血染めの服というのも問題なんですが他に無いですし……黙っていれば鼻がきく人以外はわからないでしょうし。
と、控えていた巫女さんふたりが音もなくふすまを開きました。
千蔵老人はためらうことなく部屋に入っていき、私もそれに続きます。部屋の中は奥に向かって伸びており、何畳あるのかすぐにはわからないほどの広さを誇ります。
室内には既に十八人の男女が座っていました。いずれもが常人ならざる霊力や気を宿しているようです。その中で空いているのは、二席。
私が一番入口に近く、中央に据えられた席に。千蔵老人はそこそこ奥の席に腰をおろしました。こういうものはどこも様式美、新参者は下座に座るのが一般的です。席、他に空いてないですし。
そんなことを考えていると、部屋の一番奥、上座に座っていた女性が口を開きました。
「さて……ほんならこれから関西呪術協会、緊急最高幹部会……はじめましょか」
「いや、待ってくださいよ長。何普通に始めようとしてるんです」
そう言って長と呼ばれた女性を止めたのは、私の前にいる丸メガネをかけた男性です。服装から察するに、陰陽師でしょうか? 他にも何人か似た装束の人がいますし。
「はい? どないしたんです天ヶ崎はん。何かおかしなことでもありましたやろか?」
「いやいやいや、おかしいことだらけでしょう。急な最高幹部会を開く理由は不明、しかも部外者がいる。
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