ハーメルン
最終到達点『ロドス』
EP.07 最高障壁

 跳鳥、と言うらしい。今私が騎乗している鳥野郎の種族の名だ。爪を突き立て縦横無尽に駆ける様はまさに跳ねる鳥だろう。安直な名前だが嫌いではない。
 元祖は平坦な地に生息する個体の筈だ。遠くを見る為の長い首に速く成るために退化した翼、肥大した体を支える太く長い脚など其の特徴が出ている。何故かは知らないが山岳に生息しているがな。しかも妙に適応して一部だけ別の生物みたいに進化しているし。
 まあ種を残せるのならどうでも良いことか。其れが生き物としての本能ではあるし。間違いなど無い。

 跳鳥の平時は山を駆けて移動している。登り降りが常で有るし、もしかしたら一生を山で暮らしていたかもしれない。だからこそ砂地を上手く駆けれず、心身共に疲弊して死んでしまったのだろう。盗まれた三体が老いた個体であったのも要因だろう。
 鳥野郎は死ぬギリギリで踏ん張ったものの、此れから一生人を乗せる事が出来ない程に体がボロボロになっていた。まあ何時の間にか乗せて走れる位に回復していたのだがな。突入前にしゃがみ込みんで“乗るだろ?”みたいな顔を向けてきた。
 無理くね? と思いながら遠慮無く乗れば、鳥野郎はスクッと立ち上がって駆け出した。其の時は驚いたものだ。何せ安定感が凄い。揺れが殆ど無く、錫杖を問題なく鳴らせるし手綱を持つ必要も無かった。此れはいいものだ。

 突入した先には筋骨隆々の奴らが狭い通路にひしめき合って立ち塞がってきた。体が隠れる程の大きい盾を構えてやがる。受け止める積もりなのだろう。随分と勇ましい事で。
 兜が耳を覆っているせいか波の通りが悪く、遠くからでは遠近感を壊してよろけさせる程度のことしか出来ずにいた。
 注意を散漫にさせようと壁の出っ張っている石を掴んで投げた。当たった石は爆散して黄色い液体を撒き散らす。おや、アシッドムシだったようだ。南無。

 音波で弱らした前列の重装兵を跳鳥どもが蹴散らしていく。一番前を崩せれば後は勢いと地力が高い方が勝つ。古い書物にも書いてたと冒険家が言ってた。

「不味い! アーツだ!! 皆耳を塞げ!! やられるぞ!!」

「アーツに耳だぁ!? 其れらしき音なんざ聞こえねえぞ!!」

「良いから塞げってンだよ此のド阿保! 石でも土くれでも良い!! 何か詰めてさっさと塞げ!!」

 勘の良い奴が居たようで私のアーツを対策されてしまった。音の波が脳に達する事が無い以上、此のアーツは笛の音を乱す事ぐらいしか出来ない。
 通路の横幅は実に狭いものだ。跳鳥が二体、奴らが三人詰めれば並べる程度、と言えば分かりやすいだろうか。第一陣と第二陣の壁はへなちょこだったので簡単に突破できたが、第三陣からは跳鳥の突進を受け止める奴が出てきた。

 奴、と言っても五人組だがな。奴らは狭い通路から跳鳥の突進は一体のみであると判断したのだろう。二人が前で盾を構えて、其の二人を三人が後ろで支えている。奴らの絶妙なコンビネーションは一つの個と見なしてしまうほどに上手なものであった。
 受け止め役の二人が潰れないよう衝撃を流しながら後退し、其れでいて確実に止めれるよう押さえている。かなり訓練を積んでいるようだ。咄嗟に出来る事ではない。

 だが、完全に受け止められても体勢は少し崩れてしまう。其れに突進した一体に意識が集中し過ぎてしまっている。其処を壁を走って来た二体目の跳鳥によってぶっ飛ばされ、一体目を跳び越えて来た三体目と四体目に頭を踏み潰されてしまった。

[9]前書き [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析