ハーメルン
機動戦艦ナデシコ 平凡男の改変日記
和解と決意






SIDE MINATO

艦長、副長、提督、ゴートさん。
四人が地図を見ながら頭を悩ませていた。
私達には詳しい事なんて何も分からないから、後は艦長達に任せるしかない。
それがもどかしく感じるけど、不安はない。
だって、艦長達なら最善の策を打ってくれると信じているもの。
・・・それにしても、コウキ君。泣いていたわね。
でも、あれは喜びの涙。やっと本当のコウキ君の笑顔が見られたわ。
正直、ホッとした。ナデシコクルーがコウキ君を責める訳がないって分かっていたけど、それでも心配だったもの。

「・・・ふぅ」

安堵したら溜息が零れちゃった。
何だかんだ言って、私も気を張っていたんでしょうね。
何だか、解放された気分だわ。胸が軽い。あ、心って意味よ。
早くコウキ君と楽しくお話したいなぁ。
もう大丈夫だって思ったら、ウキウキしてきちゃった。
コウキ君の傍に行きた―――。

「・・・ミナトさん、少しいいですか?」
「・・・アキト君。それに、ルリちゃんとラピスちゃんも」

・・・カッとなった。
込み上げてくる怒りを必死に抑えて三人を見る。
さっきまでのウキウキ気分はとっくに消え失せた。
・・・私の大切な人を殺そうとした三人。
コウキ君はお人好しだから、きっと簡単に許すと思う。
でも、私は当分許せそうにない。

「・・・何か用かしら?」

邪険に扱ってしまうのは仕方がないと思う。
彼らにどんな事情があるかどうかは分からないけど、私も理性だけで生きている訳じゃないの。
我慢できない事はいくらでもある。

「・・・お話があります。貴方とマエヤマと二人に」
「事情を話してどうするというの? 納得してもらって殺すの?」
「違います! 私は・・・」
「・・・ルリちゃん?」

叫ぶルリちゃん。
とてもじゃないが、あの時の冷酷な眼をしたルリちゃんには見えなかった。

「・・・私は・・・愚かな事をしました。・・・何度謝ろうとも許されない程に愚かな事を」
「・・・・・・」
「・・・私はミナトさんとマエヤマさんに謝りたいんです」

・・・ルリちゃんが泣いている。
大人びたルリちゃんが子供のように顔を歪めて、溢れる涙を拭おうともしないで。
・・・必死に頭を下げていた。

「・・・ごめんなさい・・・」

消え去るような弱々しい声。
心から謝っている事が嫌でも伝わってきた。
でも、それでも・・・。

「・・・私は貴方達が描く台本通りに動く人形じゃないわ。もちろん、コウキ君だって貴方達が都合良く利用できるような存在じゃない」
「・・・分かっています」
「分かってない。邪魔だから、危険だから、そんな理由で簡単に人を殺せる貴方達が分かっている筈がない」
「・・・ごめんなさい・・・」
「・・・席を替えましょう」

涙を流すルリちゃんとその後ろに立つ二人。
ブリッジでこんな事を話すのは間違っていたわ。
メグミちゃんもセレスちゃんもこちらを心配そうに眺めているもの。
・・・心配かけちゃ悪いから。

「・・・艦長。少し席を離れてもいい?」
「えぇっと、はい、少しぐらいなら」

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