抱え込んでいるもの
あれから一週間が経った。
ハッキングも練習を重ねて大分出来るようになってきたし、そろそろ捏造作業に移ろうかと思う。
OSの開発も特許取得の為に戸籍が必要だし、これが最優先だな。
「えぇっと・・・これをああして、これがこうなって・・・」
・・・意外と簡単に出来ました。
「やっぱり凄いな」
遺跡からハッキングの方法を習得し、その通りやればあっという間。
今までの練習って何だったんだろう?
「とりあえず地球生まれ。幼少の頃に火星へ引っ越して数年を過ごす。両親は交通事故で共に死去。それを機に地球に戻る。現在は親の遺産で一人暮らし。こんなもんかな」
うん。後は穴ができないように細かい設定を考えないとな。
SIDE MINATO
「あ、コウキ君。ちょっといいかな」
一生懸命作業中のコウキ君には悪いけど、そろそろコウキ君の身の上を知っておかなくちゃ。
一週間経って、変だけど良い子だって改めて実感したし、何かあるのなら助けてあげたいしね。
「はい。何ですか?」
振り返って私を見詰めてくる瞳と朗らかな顔。
絶世の美男とか、そんな風には思えない顔だけど良く見れば割とカッコいいんじゃないかしら。
まぁ、中の上とか上の下とか、それぐらいのレベル。
スーツ着て、真剣に仕事をしている姿は大人っぽくて素敵だと思うわよ。
まだまだ子供だけどね。
「舌だして」
「え? えぇ!?」
あ、動揺しているわ。
これはいじくりのチャンス。ニヤッ。
「ほ~ら。いいから。舌を出して。ほ~ら」
「えぇ~っと。その。あのですね」
良いわね。このギャップ。
可愛らしい反応よ。
グイッと顔を近付けて。
「眼を閉じて。私に任せて」
「あ、はい」
ギュッと眼を瞑って舌を少しだけ出してくる。
もう既に顔を真っ赤。割とモテると思うのだけど、女の子への耐性がないのかしら?
ま、私としては初心な方がいじくり甲斐があって楽しいけど。
「はい。チクッと」
「え? チクッ? イテッ」
「うん。ありがとね」
呆然と私を見詰めてくるコウキ君。
そして、すぐに落ち込む。
「ま、またからかわれた」
そういう反応がまたからかってやろうと思わせるのよ。
「何をしたんですか?」
「あ。これよ。DNAチェック」
「げ!? ・・・大丈夫だよな」
冷や汗を掻いて呟くコウキ君。
どうかしたのかしら?
ま、いいわ。
「えぇっと。マエヤマ・コウキ。十八才。父は」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・」
・・・両親がいない・・・か。
悪い事しちゃったかな。
「どうかしました?」
「えっと。ごめんなさいね。こんな事しちゃって」
罪悪感が浮かんできたわ。
他人のプライベートに勝手に踏み込んで。
「あ、気にしないで下さい。本当だったら会った日にやられていてもおかしくなかったんです。それをずっと甘えさせてもらっていて」
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