ハーメルン
<Infinite Dendrogram> 王は今日ものんびりと自殺する
初めての世界
昔から諦めが早いと言われていた。
出来ない、無理だと感じたら手を抜いてしまう。
粘ることをせずに、全力を出さずに降参してしまう。
『もう少し頑張れば成し遂げたんじゃないか?』
それは可能性の話であって結果の話ではない。
出来ないと判断したからやらなかったのだ。
もし諦めずに粘り、そして完遂出来なかった時。
その時間の無駄はどうなる。
良い経験になったね、と感情的にプラスになれる人間が諦めなければ良い。
何度も何度も何度も何度も何度も繰り返し、そしていつまでも経験だけを得ていたら良い。
経験を積めば人間は空を飛べるのか?
諦めずに空を飛ぶ練習をしていたら、粘っていたらいつか飛べるのか?
そう思うなら自分でやってくれ。
こちらは早々に見切りを付け、有意義な時間を送る。
誰かが経験をしている間に結果の出せる行動を終わらせる。
諦めが早いのではない。目に見える成果として結果が欲しいのだ。
■王都アルテアのセーブポイントの1つ
【???】クリアント
「おー」
やや無気力に感動しながらクリアントは歩きながら五感を楽しむ。
現実世界と差異など、特段感覚に優れているわけでもないクリアントにとっては、異世界に来ましたと言われても納得するほどの世界観である。
運営はよっぽど頑張ったんだなー、作りこんでるなーと思いながらクリアントは城門を目指す。
ウィンドウにあるマップで十分……ではなく、周辺に出るモンスターは経験値稼ぎには良いだろうがつまらないと初心者本位に判断したクリアントは地図を購入し、自身の足で進めるだけ進んでいく。
幸運だったのは初心者狩りと親しまれていない<旧レーヴ果樹園>に向かわなかったことだろうか。
別の城門から出たクリアントは大剣を装備して、しかしアクティブなモンスターは避け、非アクティブなモンスターを素通りして進む。
「んー、早くこいつも出て欲しいんだけど」
手の甲の紋章を見る。
そこにあるのは卵型の宝石――孵化していない第0形態のエンブリオである。
まだ成長途中どころか誕生すらしていないエンブリオであり可能性の塊。
先にログインし、活躍しているプレイヤーたちの情報を調べると一騎当千のものから、多種多様な力を持つものばかり。
オリジナリティの力を振るえるという魅力は心を震わせる。
とはいえ、それを待って街の中にいても退屈なだけだ。
とりあえず戦ってみたい。
デスペナルティは当然知っている。
リアル世界での1日ログイン禁止。こちらでは3日分。
だが、別に1日くらいログイン出来なくとも死にはしないし、こちらの世界で死んだからといってリアルで何か影響があるわけではない。
むしろログインしすぎてリアルに影響があっては困る。
息抜きに始めたゲームでリアルを破綻させるわけにはいかない。
「やっぱ誰かと来れば良かったかな」
とりあえず自分のペースでと思い、ソロ攻略に乗り出したが、1人であろうと10人であろうとモンスターの強さが変わるわけではない。変わるようなモンスターがいるとすればそれは〈UMB〉だろうが、こんな街に近い序盤の場所に出るわけがない。
[9]前話
[1]次
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:1/3
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク