監禁生活(自覚無し)
目を覚ました。
だが視界は真っ暗闇だ。手枷足枷首枷+αに更に目隠しが追加されたぜ。
どれくらい気絶していた? 属性魔力の拒絶反応なら大体一、二時間程度だろうけど確信が持てない。
「目を覚ましましたか」
おおっと
意識が戻ってから一切微動だにしていないのに何でバレた。呼吸か? そんな寝起きの一瞬だけしか乱れて無い筈だがじっと監視でもされてたのか?
問い質したいが俺には言葉という人間の誰しもが持ち得る便利ツールを使うことができなかった。
必死に全身を使った蓑虫の運動で師匠へのメッセージを送る。
「分かっています、何故あなたが拘束されているのかを聞きたいのですね?」
はい、とは声に出せないので首を縦にふる。
「治療ですよ、あなた達五人は長期間世界の理すら違う異界に居たのですから何かしらの異常が有って当然。あなたの他の四人も今頃治療を受けている筈です」
成る程、それならいくらかは納得できる。
異界というのは異常空間だ。物理法則すら違うことすらままあるし、漂う属性値は異常値を常に叩き出している等基本である。
そんな場所に1日でも何の対策も無しに居続ければ簡単に汚染される。汚染されればその内……良くて死ぬ、悪くて……人間を止める事になるだろう。
俺達は浄化装備を配備されていたが一ヶ月となれば何処か破損し汚染されていてもおかしくない。事実俺の属性値が変わっていたみたいだしな。
だから……俺の元の属性値を知っていた師匠のが俺の治療をするのは分かる。
100年前の時点であらゆる魔法、魔術知識に精通していた師匠がやってくれるのだからこれ程頼もしいことはない。
拘束された理由もそれなら何となく理解した。治療中に俺が汚染変異し理性を無くす可能性が有るからだ。邪神討伐以前に汚染され尽くし末期となった者が同じように拘束されていた。
目隠しと猿ぐつわはわからん。俺の知ってる限りではそんなの使っているのは見た事も聞いた事もない。
俺の耳にほんの少しの木々が軋む音、地面な鳴る音が届く。
椅子から立ち上がる音? そして歩く足音?
そして……布の擦れるような、音?
「治療、そう治療です。なのでこれから起きる事であなたには出来るだけ抵抗しないようにお願いできますか?」
疑問に思う俺の露出した腹部にまたも冷たい手が添えられる。今度は両手だ。
ひんやりと冷たいその感触に身をよじらせてしまうとピクリとその手が一度止まった。
一瞬の硬直の後、意を決したかのように肌を撫で始める。
俺の肌の上を滑るように動かされたその手はゆっくりと背中に回される。……ん? 背中?
そう疑問に感じたのも束の間、今度は腹部に冷たく、肌触りの良い感触を感じた。
明らかに手ではない、しかし布でもない、人の肌だ。
困惑する俺の耳にどこか熱っぽい吐息と思わず漏れたと思われる声が届く。
「んっ、はぁ……あたたかい…………」
ヤバい。さっきとはまた違う意味でヤバい。
今どういう状況か想像が付くだけにかなりヤバい。ヤバいしか語彙が出てこない。あっ、エロいがあったわ。
いやふざけてる場合じゃねぇ!!
簡単に状況を説明しよう! (錯乱)
今! 俺は全身を拘束され、上半身裸の状態で(たぶん)ベッドの上で寝かされている。
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