人工精霊
大地を照らす太陽の光が燦々と降りそそぎ、体を焼き付ける。
あれ、なにしてたんだけっけ?
「───、───!」
ぼやけた視界が鮮明になっていく。
確か……そう、師匠から受けた課題を達成したから報告に来たんだ。
「────! ────!?」
いやぁ、それにしても人工精霊の作成とか気が狂う難易度だった。精霊に干渉するのが得意で経験を積んでなければ絶対に無理だった。
いや普通に失敗して暴走させたりして惨事になったけどまぁヤメドが犠牲になっただけで済んだしノーカン。今度奢れば許してくれるだろ。
人工精霊ていうのは普通の精霊と違い属性値や方向性とも言うべき形質を調整された存在だ。言うなればカスタマイズされた専用の精霊と言うわけだ。一から触媒を元に空間を染め上げて作り上げたり、元ある精霊を掛け合わせて望んだ形になるまで合成を繰り返したりしたんだが……アカイがメガテン、悪魔とか言っていたが何だったんだ? アカイは良く訳の分からない言葉を発する。それ含めても稀有な価値観と実力の持ち主だからなぁ、よく近衛見習いまで上り詰めたものだと感心する。そこからが本当の地獄だけどな。
ということで俺は隣に居た親友のベルモンド君の肩に腕を回して初めての人工精霊作成の苦労を語った。
「いや今の今まで呼び掛けてたのを無視してたのに良くそんな行きなり喋れるな!?」
いやぁ、悪かった。意識がぼおっとしてたんだ。今も何か頭がぼぉっとしてるし何なら夢見心地だが問題はねぇ、クッソ程暑いし何処か飲みに行こうぜ。
「行かねえよ。誰がこんな真っ昼間から酒を飲むんだよ。ていうか呼んだ理由ってマジでそれだけか? 帰って良い? いやまてその前に一発殴らせろ」
何だよ暴力的だなぁ。暴力はいけねぇよ、言葉で解決しよう。会話は人間さんが産み出した最強の非暴力ツールだぜ? 時に暴力よりもえげつない破壊をもたらすけどな。
俺は暴力のむなしさをベルモンド君にこんこんと説いた。
いやしかしあっちいな……こんな中全身金属鎧で平和を守る衛兵さんには頭が上がらないぜ。
「いやもう起こる気力も失せたわ。というかお前も全力戦闘の際は全身鎧だろ」
結局それが一番強いんだよなぁ。
人間にはない固くて強靭な外皮の役割に重さと来たら殴るだけで恐ろしい凶器と化す。全身鈍器だ。
炎天下のせいかイライラし始めたベルモンドを日の当たらない裏通りへ案内する。
人通りが少なく比較的涼しい。ちょっと汚れている事を覗けばそこそこ有用な会話場所だ。
ところでベルモンド、俺を見て何か気付かないか?
「大変だ、顔に当たる部分にアホヅラが張り付いてる」
誰がアホヅラだしばくぞ。
俺は言うが早いか奇声を上げて殴りかかっていた。しばいた! なら使っていい。
だがそれを予見していたベルモンドはヒラリと身をかわして反撃の拳を俺の腹に叩き込む。
ぐぅっ……やるじゃねぇか……だがこいつはどうかな!?
体を折り曲げて腹を抱え苦しむフリからの高速の裏拳……完全に虚を付いた一撃、さしのヤツも……なにィ!? 居ない……!? 何処だ! このプレッシャー、上か!?
気付けても体が反応しても間に合うかは別で俺は飛び蹴りを受けて吹き飛んだ。ぬわーー!
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