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「いったい何処へ行こうというんじゃ?童共。」
「さすが、…お早いお着きで。」
元柳斎の姿を見た京楽が緊張からか戯けた口調で話しかける。
「…昔から逃げる悪餓鬼に撒かれた事はないんじゃよ。来い、童共。もう拳骨では済まさんぞ。」
腰掛けていた元柳斎が立ち上がり、険しい表情でゆっくりと三人に向かい歩いてくる。
突如元柳斎から重い霊圧が放たれる。
京楽、浮竹は耐える事ができたものの七緒は、その実力差から霊圧に飲まれ震え出してしまう。
呼吸は早く、顔色不良。身体は小刻みに震えており脂汗まで滲み、腰を抜かしてしまう。
それに気付いた京楽が霊圧を遮ろうとしたその時、刀璽が七緒の前でしゃがみながら頭を撫でていた。
刀璽が自らの身体で元柳斎の霊圧を防いだ事で七緒の呼吸が幾分か落ち着いてくるものの未だその身体は震えていた。
「あぁ、あぁ、こんなに震えちゃって。落ち着いてゆっくり呼吸してみな。おーい、山本。こんな歳下の子虐めんなよ。おら、春水。休める所に連れてってやんな。」
「すいません。師匠。ありがとうございます。」
いきなりの事に京楽、浮竹、元柳斎の三人は呆然としてしまうが刀璽の言葉に京楽が礼を言い、七緒を抱えその場を瞬歩で離れ、すぐに戻って来る。
「にしても懐かしい面子だな。修行でもすんのか?」
笑いながら霊圧を解放する刀璽。これにより、辺りに広がる重苦しい空気が霧散する。元柳斎の表情がさらに険しくなり、その足を止める。
「先程もそうじゃが追放中の身であり何用じゃ?」
元柳斎の問いかけに京楽、浮竹も同様の疑問を持っていた事もあり元柳斎を警戒しながらも刀璽へ視線を送る。
刀璽は頭を掻きながら面倒くさそうに口を開く。
「だから、さっきも言っただろ。邪魔してぇ奴がいるんだよ。」
飄々とそう言う刀璽に対し、元柳斎は刀璽の性格や今までの行動を考えるとそれだけの理由だとは思えず、さらに厳しく刀璽を睨みつける。
「…あぁ!わかったよ!てめぇみてぇな爺に見つめられても嬉しかねぇよ!単純に俺の楽しみだよ!少しでも強ぇ奴と殺る為にわざと嵌められて現世で待ってたんだよ。お陰で良い事もあったしな。それが今だってだけだ。」
刀璽以外の三人は刀璽の話を聞き、やはりあの卯ノ花隊長の弟だと感じた。また、三人とも刀璽が追放されるきっかけだった魂魄消失事件についても疑ってはいなかったがやはりと思うところがあった。
非情に残念な事に三人から見て刀璽は水面下で何か策を労する様な人物ではなく、あの事件も何かしらの理由があると感じていた為であった。
「貴様は、何故そこまで強者と戦いたがる?」
元柳斎は変わらず険しい視線のまま聞く。護廷として尸魂界の為と言うのなら多くは目を瞑ろう、しかし袂を分っている現在、強さを求める理由によっては、ここで自らが斬らねばと考えていた。
「あぁ?俺が強けりゃ姉貴は戦わなくて良いだろ。どんな理由であれ、姉貴は四番隊にいるんだろ?なら、もう前線に出ねぇでも良いようにな。そのまま身を固めてくれりゃ、弟としても嬉しいんだがな。」
と三人の予想する斜め上の返答が返ってきた。姉から継いだ剣八を名乗っていた時の獣の様な理由ではなく、姉の為ときた。
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