ハーメルン
サムライミ版のピーターに憑依した男っ!!
第十七話



「まさかグライダーを持ってエレベーターに乗るとは思ってなかったよ」


思わず無機質な業務用のエレベーターの天井を見上げながら俺は言った。デカァァァァァいッ説明不要!!なオズコープの業務用エレベーターに、グウェンとノーマンで乗り込んでいるのは複雑な理由があった。


「仕方ないでしょ?飛んで外に出ていくルートなんて無かったんだから」


思いの外、複雑ではなかった。ゾラ博士がウルトロンと化しグライダーで飛び立った後、敵は出入り口を全て塞いでしまったのだ。専用の中央シャフトすら閉鎖され、外に出るにはグウェンが最初に提案したダクト内を這い上がるルートしかなかったのだが、グライダーを担いで通れるスペースもない。

というわけでノーマンの手によって取り戻したウェンディのアクセス権を使用してオズコープのセキュリティシステムの一部を乗っ取ることにしたのだった。


《ゾラ博士には感謝をしています。こうやって今は私を生み出してくれたマスターと話をすることができるのですから》


マスターはよせ(某ガンダムのイケオジ風)。指向性とはいえ使用者のアシストをする目的があったので、簡単な発声システムとコメントブックは搭載していたのが、まさかそれがそのまま疑似人格を与えられて好きに喋るなんて思っても見なかったんだぜ。これあれだ。ジャービスが不在になって、スタークさんが新たに作ったAIみたいなノリだわ。

声はかなり少女チック……強いて言えば、CV坂本真綾さんみたいな声色です。誰だ、ウェンディをこんな声にしたのは!あ、ノーマンさんですかナイスゥ!!(本音)

そんなわけでウェンディの能力を借りて今は乗っ取ったオズコープの業務エレベーターの中にいます。


「はぁ、堂々と搬入用エレベーターで上に向かうとはな」


くたびれた研究着からスーツに着替えたノーマンが疲れたように言うが、その目は少し楽しげそうだった。こう言ったスパイものが好きだったんだよ、と悪戯っぽく眉を上げるノーマンに、俺は少しばかり忠告をした。


「オズボーンさん?もしこれに敵が乗ってきたら……」

《マスター、このエレベーターの権限は私にあります。万が一にも敵が乗り込んでくることは……》


その会話の最中、ポーンとエレベーターの停止階のランプが光った。回数は地上までまだ下で、俺たちが指定した階数でもない。だがエレベーターは確実に減速し、そのフロアに止まった。ウェンディが搭載されているグライダーを見ると、さっきまで元気よく点滅していたディスプレイがフッと光を消した。


「僕らのことはスパイダーマンとウーマンって呼ぶようにしてくださいね!!」


エレベーターの扉が開くと同時、俺とグウェンは飛び上がって入り口で行列を作っていたオズコープの武装警備員に向かって拳や蹴りを繰り出した。銃を構える?ダメダメ!そんな物騒なものは出しちゃダメだよ!!そう叫びながらウェブで相手の構えた銃を器用に奪ってゆくと、丸腰になった敵の顔面にグウェンがブラジリアンキックを叩き込んでいた。

ワァオ、割とアグレッシブなのね、彼女。


「全身タイツの不審者なんて聞いてないぞ!!」

「今全身タイツって言った!?失礼だぞ!?」


[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析