第六話
祝★アークリアクター(仮)稼働テスト合格!!
残念ながらまだまだ完成じゃないんですよ、とハリーに言ったら祝賀ムードで意気揚々とワインを出していた彼の顔がスンってなっていた。ごめんよ、ハリー。だがお祝いはするからワインは仕舞おうな!ワインがぶ飲みで天啓が降りてきて以降、どっぷり酒の沼に親友がハマったような気がした。
オクタヴィアス博士と奥さんはまるでノーベル賞を授与されたようにお祭り騒ぎで二人してシャンパンを開けていた。ここラボで僕ら未成年なんですけど!?まぁいいか、俺もベンおじさんとメイおばさんを呼んで懇意にしているピザ屋から何枚かアメリカンピザを注文。
実験が成功するまでは設計図や失敗作の残骸や加工したパーツのゴミで溢れかえっていた机をノリと勢いで片付けて、光り輝くアークリアクター(仮)を中心に、テーブルの上いっぱいにご馳走を並べて、全員で完成を祝った。
といっても、リアクターの稼働効率は10%以下で発電量もまだまだ少ない。できて豆電球の電源を向こう百年以上維持できる程度のエネルギーしか出せていない。オクタヴィアス博士とハリーはそれを知ってガッツポーズしていたけど、目標は毎秒3GJですって言ったら二人とも真顔になってました。目標は高く持たないとね!!
そんなわけで何項目かのテストを三人で行ってから、まずは最大のスポンサーであるノーマン氏にプレゼンを行うことに。
ドライヤーの消費電力程度なら余裕で賄えるほどのエネルギーを永続的に生み出すアークリアクター(仮)をノーマンの書斎へと運び込み、オクタヴィアス博士主導でプレゼンを実施したところ、企業として博士と契約を結び、アークリアクターの独占販売を行いたいと正式に打診すると太鼓判を押してもらえた。
すぐにオズコープ経由で学会にも発表される手筈が整っており、申請資料にもオクタヴィアス博士の名前がしっかりと乗っていた。ここで手柄を奪うとかすると後々の遺恨になるからな!オッケーを出してノーマンに申請書を返そうとしたとき、オクタヴィアス博士が待ったをかけた。
「これは私一人ではなし得なかったことだ。ピーター、そしてハリー。君たちの名も共同研究者として載せてもらえないだろうか?」
予想外だ。思わずハリーと顔を見合わせる。ぶっちゃけていうとかなり嬉しい話であるが、共同研究にするとなるとオクタヴィアス博士がこれまで積み上げてきたトリチウムからのエネルギー発生論も俺たちの成果となってしまうのではないだろうか?それを危惧してオクタヴィアス博士の言葉を断ろうと思ったのだが、彼は首を横に振って笑顔を向けた。
「学会で誰もがトリチウムからのエネルギー発生論を馬鹿にしていたが、君とハリーは私がそれを成功させると確信していた。だから、その後のことを考え、このアークリアクターが出来上がったのだ。手の中に太陽を、そう願って続けてきた私の生涯の研究は……君たちと巡り会うために続けてきたのだろう」
彼は言う。共同研究として共に名を連ねるのはオクタヴィアス博士からの恩返しであると。思わずその言葉に涙が出そうになった。ハリーなんて隣で男泣きしてるし、ノーマンもつられて泣いているように見えた。博士は本当に満足げな顔で俺たちに手を差し伸ばしてきた。涙を堪えながら……ハリーは泣いてるけど、俺たちは差し出された博士の手をしっかりと握って握手する。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク