宝石の名前
体全身が怠い。
感謝祭も無事に終わり、マックイーンと新たなスタートを切った僕は、謎の痛みと倦怠感に襲われていた。
朝起きると、僕は何故か変な態勢で寝ていたので休むことができなかった。しかし倦怠感についての説明はつくのだが、痛みについてはどうも心当たりがない。
特にお腹当たりが痛い。
おっかしいなあ、昨日変なものでも食べたかなあ? でも昨日何食べたかって言われたら……あれ?
昨日何してたっけ? 確か〈スピカ〉の部室裏でマックイーンの想いを曝け出させて、ここが新たなスタート地点だって言って…………あれえ?
昨日のある一点から記憶を思い返すことができない。本当に何をしていたのだろうか。思い返せないと言うことはそこまで大切なことではないのかもしれないが……
まあいいか、いずれ思い出すだろう。
楽観的な考えを持ち、今日も今日とて朝早くトレーナー室に向かう。感謝祭が始まる前も仕事が多い、感謝祭が終わってからも仕事が多い。
仕事の多さについて100個や200個文句を言いたいところだが、理事長やたづなさんの方が明らかに仕事の量が多いように見えるので、この気持ちは墓場まで持っていくことに決めている。
タングステンのように重い足をえっちらおっちら動かし、ようやくトレーナー室に到着する。
「ここで〜今〜輝きた〜い〜……あれ?」
なんで鍵が空いてるんだ? と、思ったが、前にも同じことがあったのを思い出す。
あの時はマックイーンが部屋にいたっけ。だが、彼女は一日休みのはずだ。
今日は感謝祭の片付けなので、出し物には参加していないマックイーンはやることがないというのもあるが、昨日あれだけのレースをした後に休息を取らせないというのも酷なものである。
休みと言ってもトレーニングが休みというだけで、彼女がここに絶対いないというわけではないが、昨日のレースについては全部曝け出した訳だしマックイーンである確率は低いだろう。
じゃあ誰だ? 空き巣か?
前回と同じようにそろーりとドアを開けると……
「……え?」
「あ、トレーナーさん、おはようございます!」
「ああ、おはよう……じゃなくて、どうして君がここに? どうやって入ったの?」
トレーナー室にいたのは意外も意外、サトノダイヤモンドだった。
「どうって……この部屋元から開いてましたし……」
「え……マジで?」
「マジです」
僕としたことが、昨日ここの鍵を閉め忘れていたらしい。そもそも昨日の記憶があやふやな時点で鍵をかけるもクソもないのだが。
「あー……でもどうして君はここに? マックイーンなら今日は休みだから、ここに来るより直接尋ねるか後日に回した方がいいと思うんだけど……」
「いえ、今日はマックイーンさんではなく、トレーナーさん、あなたに用事があって伺いました」
僕に? はて、僕は一体彼女に何かしたのだろうか。
…………
いや、したじゃん。まさかたこ焼きの件がマックイーンにバレたとか……!
「サトノダイヤモンド、一回落ち着こう。あれはそうじゃないんだ。誤解なんだ。だから一緒にマックイーンに謝る言い訳を考えて……」
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