土の香り
フジマサマーチというウマ娘をご存知だろうか。端的に説明すると、かつてカサマツレース場という地方のレース場で活躍していたウマ娘だ。
主な脚質は逃げ、ダートの短距離からマイルを得意としていることがデータから読み取れる。さらに、競走戦績を見るに彼女はカサマツレース場であのオグリキャップに二度も勝利している。東海ダービーの順位も四着と悪くなく、間違いなく強者だ。
しかし、問題はその後。
フジマサマーチには中央への在籍期間が存在している。彼女に対して既視感を覚えていたのはそれが理由だろう。
彼女の中央での戦績はお世辞にも良いとは言えない。四戦四敗、その全てが最下位という結果だ。カサマツに戻った後のレースでも結果が振るわず、それ以降はここ、高地レース場で走っているということが分かっている。
そしてフジマサマーチは芦毛である。オグリキャップとの芦毛対決と言われたら真っ先にタマモクロスを思い浮かべる人が多いだろうが、それ以前にカサマツレース場ではオグリキャップとフジマサマーチの芦毛対決が行われている。
と、まあ調べることができたのはこのくらいだ。もっと時間をかければさらに多くのことが分かるのだろうが、あまり時間が無かったため、少々中途半端になってしまっているが、そこは許していただきたい。
ここまでたらたらとフジマサマーチというウマ娘について語ったが、今回はそんなウマ娘に対して勝負を挑まれたという形だ。目と目が合えば、ではないが、彼女の瞳の中の燃え盛る闘志を感じ取り、挑まれた勝負を断りづらかったというのもある。
銀色の髪をたなびかせ、週刊少年漫画の主人公顔負けの戦意を剥き出しにしている。
そんな闘志の塊のようなフジマサマーチは、名前を呼ばれたことにより少し驚いたような顔をしていたが、すぐに元の表情に戻り不敵に笑った。
「あなたに名前を教えた記憶は無かったはずだが?」
「今はこれ一つで様々なことが調べることができてね。良い時代になったものだよ」
これ見よがしにスマホを片手にクルクルと回す。例え少ない情報でも簡単に調べ上げることができるのがこの電子機器の良いところでもあり悪いところでもある。良い子のみんなはインターネットの使い方には気をつけようね。
「ふっ……では改めて、私の名前はフジマサマーチ。今日この場に来ていただいたことに感謝する、メジロマックイーンのトレーナー」
「そりゃどういたしまして。僕の方は自己紹介はいらないみたいだね。それじゃあ早速……」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいます!?」
僕とフジマサマーチとの間に大慌てでマックイーンが入り込んでくる。そういえばマックイーン達にはフジマサマーチについて何も話して無かった、というか話さなかったな。それでは彼女達も困惑してしまうだろう。
「これはどういうことですの!? えっと……フジマサマーチさんと仰いましたか。貴方は私達のトレーナーさんとどういう関係ですの!?」
あ、そっちか。レース云々とかそういう話かと思った。
マックイーンの後ろではダイヤとセイウンスカイがうんうんと首を振る。いや、ダイヤはともかくセイウンスカイのトレーナーは僕じゃないからね?
「メジロマックイーン、それをお前に言う義理は無いが……昨晩少し話した程度の仲だ」
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