ハーメルン
妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】
やがて金字塔へと至る再点火
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新しく目標を設定することにした。
最終的に目指す大目標と、そこに至るまでに当面の目的として目指す小目標だ。
漠然と良い生活をしたいというのではなく、大目標として前世の豊かな生活を再現。
ひとまず目指す目的として、この荘園に技術や知識をもたらして豊かな住処とするのが小目標である。
「衣食住というし、この辺をメインの縦軸に据えてオマケ込みで色々と実践的な知識を集めていく。そして公開段階を横軸に決定と」
これまでにやって来た事を縦軸と横軸に分けて分類。
今までの総括を行いつつ、これから何をするかを決めていく。
やはり目標が決まることで目指すべきところが決まるのは大きい。
ただ目的を決めるだけではなく、段階を踏まえたりする余裕がある事を自覚できたからだ。
「衣食住の衣は今のところはお蚕さんを手に入れた段階。これに関しては育てていくしかないけど……将来的にはファッションでも確立する? 流行である必要はないけど、独自のブランド性は欲しいかな」
服装を見ればその人が判るとか昔から言われている。
さすがにそこまでピッチリするのはどうかと思うが、田舎者と思われるかどうかはプライドの面で重要だ。格好良い服や可愛い服を売っているならば訪れてくれる商人は多いし、住民たちの満足度も違う。
とはいえ流行は容易く変遷するもので、こればかりは装備とは同じにできない。戦闘ならば重装甲・軽装甲くらいで良いが、格好となればそうもいかないのだから。
「エルフからもらった蚕はやっぱり天蚕だったし、色が乗り難いのを逆に特色とするとして……あとは意匠の統一性があると面白いかも」
普及している家蚕は白い個体は小さいが殖やし易く、管理もし易い。
しかし天蚕または山蚕と呼ばれる種類の蚕はそれより大きい癖に死に易く、糸が強靭な分だけ染色し難いという欠点があったのだ。
そこで普通に編み込むのではなく、服ならイニシャルとか縁取りにして目立たせる。その上でそれらをあしらったコートや帽子を外装として付けくわえるという独自性を持つのはどうだろうか?
「この世界には国の紋章とか騎士団章くらいだしなあ。メイド服じゃないけど制服って文化は良いと思うんだよな」
そういって双葉がメイド服やナース服を着る姿を思い浮かべる。
そして今回取り入れようとしている外装を追加。ナースキャップやスカートの一部に、独特のラインが入った光景に発展させる。
エッチな事に使うかはともかくとして、コスプレならぬ個人的なファッション・ショーを愉しむのも良いかもしれない。本格的にやるなら領主経由で侯爵さん主催の大規模なお祭りかお茶会でも催し、各家の独自性を喧伝するのだ。
「よし。蚕から始まってファッション、そしてファッション・ショー。夢が広がるし地域も潤うから何時広めるか次第ってことで良いかな。じゃあ次は……」
目先の目標として蚕の増殖、生糸としての使用法確立。
そして独自ファッションに繋げるというあたりに秘密があっても良いかもしれないが、村で育てる以上はバレ易いしバレても問題ない内容だ。殖やし易くするためのコツを見つけたら隠しておけばいい。
他所の荘園で殖産に励まれても困らないし、何なら余ったらという前提で卵を分けてもあげても良いくらいである。家蚕と違って……天蚕は食べる葉っぱの幅が広いのもあるしね。
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