ハーメルン
妖怪にまで零落した女神と契約して、異世界へ布教に行く話【完】
被害を出さない為の戦
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気が付いた人もいるかもしれないが、この戦いで苦戦する要素は殆どない。
村人が避難するレベルではあるが、この地方にアンデッドが万単位で来たなんて話は聞いてない。つまり圧殺されるほどの数を警戒する必要はないのだ。
戦闘前に言った通り、建物の陰に隠れていたとか穴に落ちて発見が遅れたとか。そういうアクシデンドでも無ければ滅多なことでは押し負けすらすることはなかった。
「予定地点で爆発したわよ! どのくらい倒れたとかは判んない!」
女エルフの紅梓が目の良さを活かして着弾観測。
ファイヤーボールとか範囲攻撃の類が爆発すれば、ゾンビだのスケルトンだのは問題なく倒せる。
「よし、先発組突撃! 二番隊と三番隊は封鎖をお願い!」
「「おう!」」
五人一組の隊が三つほど進軍を始める。
一番隊は僕らでアンデッドを蹴散らして歩きまわる役。その後ろから付いてきた二隊は側面に梯子を木々に括りつける役だ。
ドワーフである剛盾の斧が一撃でスケルトンを粉砕し……。
何てのは当然なので、二番隊の作業例を簡単に説明しよう。先発隊は勇気ある者というかサクラによる鼓舞を前提とした傭兵隊だ。二人一組で梯子を構え、あるいは紐で括っていく。括りつけるのは左右でも良いし、障害物を利用できるなら片側に二つとかでも良い。
「二番隊終了!」
「三番隊もだ! 後ろは気にすんな!」
五名で一組なので、残り一人は監視と報告役になる。
僕ら一番隊が安心して戦えるように周辺を監視しつつ、もし動けるアンデッドが残って居たら始末無いし食い止める事になっていた。
「荷車! 次の梯子が終わったら逃げるよ!」
「俺の逃げ足を舐めんなよ!」
そして予定通りルートを確保すると、そこへ荷車を呼び寄せたのだ。
もちろん積んでるのは梯子の御代わりであり、都合よく結べる樹だとか建物が無い時は障害物にする予定だった。
いわゆる幌馬車戦術で、欧州の何とか戦争とか西部劇で大活躍するアレである。
近代的な軍隊には意味がないが、中世レベルの兵士や魔物相手には十分な戦果を発揮する。特に今回はキチっと封鎖などする必要はないのだから猶更だ。
「完全封鎖しなくて良いんだな?」
「そうだよ! どうせ数が来たら無理だし、だいたい幽霊系には効かないって言ったじゃん! 坂に誘導だけはしといて!」
乱戦の最中なので誰が言ったのかとか気にせずに口汚く答える。
木々と建物の間を梯子で封鎖し、足りなければ荷車も使って足止め。それさえできればもう思い残すことは無いので、一気に戦線を後退させた。
初動の目的はあくまで一次ラインの設定。
障害物で斜めに受け流し、有象無象のアンデッドを坂道へと誘導していく。そして障害物なんかじゃ止められない幽霊系だけを直進させることが目的だった。
「思ったより数が来てる! どうする?」
「惜しいけど魔法を使おう! 拓けたところで一斉攻撃! 後はゾンビと一緒! 封鎖は要らないけどね!」
これが獣タイプの魔物だったらここまで都合よくはいかないだろう。
大爆発が起きれば警戒もするし、移動速度が段違いだ。背中を見せている間にやられる可能性があるので、徐々に戦線を組み上げていく必要があった。
だがアンデッドだと話が変わって来る。
恐れる心も焦る心も無く、良くも悪くも狙う相手が居なければ同じ場所でジッとしてるし、狙う相手が居るならば延々と追い掛けて来るのだ。ゾンビとかは障害物で斜めに受け流せば当然そちらを回って来るだけだし、障害物が効かない奴は延々と直進して来る。
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