9話 お前が切り裂いた世界、私が切り開く世界
2027年6月14日 11:00 太平洋上
今日は出撃で、少し遠くまで出てきていた。余所の鎮守府が打ち漏らした敵勢力を倒しきるのが目的だ。編成は、いつもの新人組5人と雷さん、隊長は卯月さんの7隻編成だ。
「こちら卯月、目標は全部撃沈した。他の反応どうか」
『こちら本部、響だよ。他の反応は特にはないから警戒は怠らずに帰投準備を頼むよ』
「卯月、了解。だ、そうだお前ら。帰投準備入るぞー」
「「了解」」
作戦は滞りなく終了。針路を鎮守府に向ける。
「なんというか、今回も張り合いがなかったね」
「逃げ出してるから必死の抵抗とか、自棄っぱちで捨て身の大暴れ、とか予想してましたけどそういうのもなかったですね」
「カテゴリDはそんなものよ?その場でやばいと思って逃げ出しても、しばらくしたらコロっと忘れちゃうから時間差で追討するのが効果的なの」
瑞鳳達と雷さんの話を聞きながら、一応の周囲警戒はしておく。ここまで出てくるのは初めてだったから。
「危ない目に合わない、って意味では幸運なんでしょうけども、物足りないのありますね」
「この分だと赤城さんの域まで到達するのにいつまでかかるやら。結局127に赤城さん来てくれていないし」
「そもそも臨み薄って金剛さんも言ってましたからね」
電達の会話を聞いてて、確かに物足りないな、と思う。もっと蚊帳の外に置かれない力が欲しいのに。例えば、アイツのような――
『こちら響。聞こえるかい?敵影はないけどジャミングらしき反応を検知。北西と南東に艦載機を飛ばして欲しい』
「こちら卯月。了解した。瑞鳳、加賀。聞こえたな?艦載機飛ばせ!警戒レベル上げろ!」
響さんからの通信で慌しくなる。その瞬間。
「――ッ!!?」
「江風ちゃん!?」
「南南西、7時の方向!追加でなんか飛ばせねぇか!?」
「どうした江風!?羽黒、そっちに偵察機飛ばせ!」
即応する卯月さんと指示されて艦載機を飛ばす羽黒。その結果はすぐに出た。
「瑞鳳航空隊、南東に2部隊確認!追手です!」
「加賀航空隊、北西に1部隊。足止めするように向かってくるわ」
「羽黒偵察隊、敵影を確認、あ、落とされました!?」
「水上偵察機を即撃破だぁ!?総員北西に舵を。足止めさっさとぶち破って撤退する!南南西が本命だ!急ぐぞ!」
『こちら響。増援を寄越すから持ちこたえて欲しい』
「こちら卯月!やってやんよ!雷!フォロー頼むぞ!ニュービー共!気ぃ引き締めろ!」
「「了解!」」
もうすぐ足止め部隊と交戦する、というタイミングでソレは南南西から来た。
「ハハハハッ!お前たちか!『獲物』って奴はよォ!」
「ありゃ……カテゴリA、いや、ネームドか!?」
「なんでもいいだろォ!楽しませろよ!えぇ、どいつが『獲物』だァ!?」
「知るかテメェ!」
追いついてきたのは戦艦レ級と呼ばれる艦種だった。いや、それ以前に――
「……『アウトロー』か」
「アァ?アタシの名前を知ってるのかァ?」
「『アウトロー』だとぉ!?」
私はお前を知っている。お前は私を忘れたのか。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/6
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク