5.片鱗
「えええええええええええええええええ!?!?!?!?!?」
帝王さんの声が当たり一面に響き渡る。
あまりの叫び声の大きさに、俺も帽子越しに耳を押さえてしまう。
帝王さんは大声を出した後、ぽかんと口を開けて固まっていた。
周りにいたウマ娘もびっくりしたのか、一斉に帝王さんの方を見る。
それで我に返ったのか顔を真っ赤にして、ベンチに座りこんでしまった。
俺は帝王さんの隣に行き、ベンチに座った。
「よぉ」
「よぉ、じゃないよ! え、まだボク混乱してるんだけど、本当にねずみさんなんだよね……?」
「うんまぁ証拠になるか分からないけど、ほら」
そう言って俺は先ほどまでやり取りしていた帝王さんとのDM欄を見せる。
帝王さんはそれをまじまじと見て
「うわっホントだ…… まさか女性、ウマ娘だなんて思わないよ……」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「言って無いよ! だってボイチャした時に渋めの男性の声だったじゃん!」
それは俺がボイチャ時にボイスチェンジャーを使って声を変えていたからだな。
ネット上で女性ってバレるとめんどくさいかなぁって……と思い使っていた物だが、図らずも勘違いさせていたようだ。
「因みに俺の事なんだと思ってたの?」
「うーんとね、30歳前後のおじさん……かな?」
うんまぁ男性と勘違いされるのはあれとして、君おじさんとボイチャしたり、DMしてたりしてたの?
俺がウマ娘だから良かったものの、現実でこんな事あったら事案である。
……転生前の年齢を足したら恐らく30歳前後になるのは黙っておこう。
「でもどんな姿でもねずみさんはねずみさんだもんね! あ、でもねずみさんは本名じゃないからえっと……」
「俺の本名はスターゲイザー、だ。これからよろしくな」
「よろしくね! ボク名前はトウカイテイオー! 未来の三冠ウマ娘だよ!」
帝王さん……いやテイオーさんが元気に自己紹介をしてくれた。
てかテイオーだから帝王ってまんまやんけ! ネットリテラシーどうなってるんや! って言うツッコミは心の中で消化しておくことにする。
「で、スターさん! じゃあ早速ボクとトレーナー契約を…」
「と、俺も言いたいところなんだがな」
残念ながらウマ娘と正式に契約するには、ウマ娘側が選抜レースに出る必要がある。
つまりテイオーさんが選抜レースに出た後、俺と契約するという流れになる。
「というわけでテイオーさんが選抜レースに出るまでは仮契約だ。俺もテイオーさんの走り見たいしな」
「えー! まぁ決まりならしょうがないけどさぁ」
テイオーさんが不満そうな顔で文句を言う。
因みに選抜レース自体は一週間後にある。なので一週間は約束を果たすのはお預けだ。
「じゃあ、その選抜レースまでボクのトレーニング見てくれるっていうのは……」
「それもダメ。他の選抜レースに出るウマ娘と不公平になっちゃうからな。それに俺もテイオーさんの走り見たいし」
そう。俺はテイオーさんの走りをまだ見たこと無いのだ。
トレーニングで走って貰う事も出来るが、本番のレースのように他のウマ娘と走る選抜レースは貴重なのだ。俺は純粋な現在のテイオーさんの実力を確かめておきたい。
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