ハーメルン
真剣で居合ってカッコいい! 
一話 武術との出会い

 その日は、前の時よりも倍近く居合抜きを行うことができた。しかし、結果としてまたしてもその日の内に刀を壊してしまうのだった。

案の定と言うべきか家に入ると、父が壊れたオモチャの刀を見て、苦笑いする。

「まぁ、あんだけ使ってれば、そりゃあ壊れるか……」

 今日初めて見た、我が子の練習(遊び)を見て仕方なさそうに頭を掻く。それは、何時間も狂ったように居合抜きをする様子。妻が心配になって止めようとする程に。だが、あんなにも集中してやっているのを邪魔するのも悪い。結局は、見守ると言う方向になった。しかしそれがまさか、壊れるまで続けるとは思っていなかったのだ。
 何かに集中して取り組むことは、良いことだ。それもこれだけ長時間夢中になって続けるなぞ、たとえ好きな事であっても容易ではない。

 落ち込む刃を見て父は、よしッ、と膝を叩く。

「そんなに好きなら、もっといっぱい買ってやろう。お父さんは稼いでるからな!」

 そんな気前のいい言葉と共に、翌日30本ものオモチャの刀を父は買い与えた。少年はとても太っ腹な父に感謝した。これでまた、居合の練習ができる、と。

 それから一ヶ月。その30本のオモチャの刀は、無惨にへし折れていた。
 これには流石の父も動揺を隠せない様子で、刃を信じられないような目で見ていた。やってしまったとは思うが、仕方がない。だって楽しいんだから。

 少年はまた買ってもらえるように、必死に父の御機嫌をとるのだった。

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