ハーメルン
真剣で居合ってカッコいい! 
三話 嵐に備えて

 

 日本には、全国を代表する有名な高校が二校存在してた。一つは東の川神学園。もう一つは西の天神館。この二校は、生徒一人一人の個性を尊重するために様々な取り組みを行なっている。自由な校則、ユニークな行事も多々あるが、1番の特徴と言えるのは決闘と言われるシステムを導入したことだ。
 この決闘とはそのままの意味で、生徒同士での決闘行為を推奨すると言うモノ。論争の決着や単純な修行行為としても頻繁に行われ、二校が武道に力を入れていることが見て取れた。それもそのはずで、二校の学長をしている者は、双方共に武術界にその名を轟かせる伝説的な人物なのである。

 川神学園学長、川神鉄心。その人は川神院という有名な拳法寺の総大であり、四天王、天下五弓の選出など、武道を嗜む者たちにとってその名を知らぬ者はいない程の有名人である。

 そして天神館は、学長である鍋島正が師である川神鉄心の教えをより多くに広めるために、川神院を似せて作られた学校なのだ。故に二校が似た校風である事は至って自然な事であり、世間で比較されるのもまた自然な流れであった。

「ねぇ、やっぱり本当みたいだよ。修学旅行で川神に行く時、川神学園に決闘を申し込むって話」

「みたいだな。へッ、最近川神学園の奴ら、東高西低なんて呼ばれて調子に乗ってるようだからな。その鼻っ柱へし折ってやるぜ」

 場所は天神館、三年生の教室。
 昼休み食事を終えた生徒達が、ガヤガヤと食後の会話に花を咲かせていた。その中の一つである二人の男子生徒は、近々行われるであろうと噂されていた決闘について話し合っていた。

「でもさぁ、向こうにはあの『武神』がいるんだぜ?倒した人間をラーメンにして食べたなんて逸話があるほどの凶戦士だよ!?」

「だが逆を言えば、その武神さえ何とかしちまえば後はこっちのモノって事だろ?どうせ川神学園なんざ、武神のワンマンチームでたいしたことねぇって」

「そ、そうかなぁ……?」

 威勢よくそう吠える男子生徒に、気弱な男子生徒は懐疑的な視線を向ける。しかしそれも仕方なく、何処ぞの超人のように噂される武神、川神百代は、名高い四天王でも最強と謳われる存在だ。何千回と言われる決闘の数々を連戦連勝、現在も無敗を誇り世界からもその動向を注目されているほどに。
 そのような存在が相手なのだ、彼の弱腰の姿勢には威勢の良い男子生徒も一部共感する所はあった。でもそんな心配は杞憂だと言うように、自慢げに天神館の戦力について語り出す。

「武神のようなエースがいるのは何も川神学園だけじゃねぇ。ウチにだっているだろ?我らが西方十勇士がな!」

「そ、そうか!?確かに彼等なら武神にだって、きっと対抗できる」

「おうよ。例え俺たち三年が敗れたとしても、十勇士全員が全て揃ったキセキの世代、二年生達がいれば絶対に勝てる。
 なぁ、お前もそう思うだろ──宮本?」

 同意を求めるように威勢の良い男子生徒は、隣に座っていた男に話しかける。最初から話の輪に入っていたわけではないが、隣に座っていたせいか会話の内容は否が応でも耳に入ってきていた。
 そしてその突然話しかけられた男とは、小学生の時からすっかり成長した男子生徒、天神館3年生の宮本刃であった。
 机に片肘をつきながら、どうでも良さそうに答える。

「ん?まぁ、そうだな。勝てるんじゃない……たぶん」

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