ハーメルン
真剣で居合ってカッコいい! 
五話 最も強き者

 その服装は川神学園の物では無く、天神館の物。つまりは敵であった。左手に刀を持ち、足取りは軽く、まるで散歩でもしているかのように本陣まで一直線に向かってくるその男を見て、百代は立ち上がる。
 やがて本陣までたどり着いたその生徒は、百代を見詰めながら確かめるように質問する。

やっぱり(・・・・)、キミが大将なのかな?川神百代」

「ああ。いかにも私が大将だ」

 得意げにそう言い放つ百代とは対照的に、天神館の生徒は疲れたように溜息を吐く。
 
「……ボクの名前は宮本刃。天神館の大将だ」

「へぇー……。一人で敵陣に乗り込んでくるなんて、大した度胸じゃないか」

 大将として名乗りを上げた生徒、刃は睨みつけるようにして眼前の百代を見据える。対する百代は腕を組み、いかにも余裕と言った風に応えた。
 刃が来たことで、戦闘が始まると予感した非戦闘員組は、素早く二人から距離を取る。その最中京極は、刃がこの場に現れたことに言い知れぬ違和感を抱いた。
 
(奴はいったい、何処から現れた……?)

 それは勿論、正面からである。しかし、そんな事は京極とて承知している。問題なのは、刃がどうやって正面からやってこれたのか、その一点だった。
 現在、川神学園三年生の中から選び抜かれた武闘派の生徒達が、周辺を隈なく探索中であったはずだ。本来なら見通しの良い正面を通って、刃が誰の邪魔も受けることなく本陣に向かうことなど、不可能なはずである。
 嫌な予感が、脳裏を過ぎる。

「キミ、今すぐ出払っている者達に連絡を取るんだ」

「え?は、はい!」

 京極はすぐさま側にいた女生徒に、他の生徒達と連絡を取るように指示を出す。突然の事に最初は驚いた女生徒だが、すぐに言われたように連絡用のトランシーバーで呼びかける。だが、その呼び声に応える者は、一人もいなかった。

「あ、あの京極君」

「どうした、何かあったのか?」

「何かあったと言うか、その誰も通信に応じてくれないの……」

「なんだと?」

 おかしい、そんなはずは無いと再確認するも、帰ってくる答えは同じ、応答されることはなかった。
 連絡用のインカムを渡されているのは、この場に残る非戦闘員の3名と、百代を除いた186人の生徒達を率いる10人の分隊長達だ。各人が運動系の部活の部長を務める武人であり、確かな実力を兼ね備えている。
 連絡が取れない可能性として考えられるのは、此方の持つトランシーバーが壊れているのか、もしくは分隊長達の持つインカムが一斉に故障しているかのどちらかだろう。可能性として高いのは前者である此方の持つトランシーバーが壊れていると言うことだが、見たところ壊れているようには見受けられない。

 いったいどう言う事だと、各人が散らばった工場地帯に目をやる京極。だが、どれほど見つめようとも答えは分からない。返ってくるのはただ一つ、静寂(・・)だけであった。
 
「……静かすぎる」

 しかし、ふとした瞬間に京極は気づくことができた。周囲が静かすぎるのだ、不自然なほどに。

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